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刑事裁判、証拠の謄写費用に数百万円?面会に往復6時間かかることも…「IT化」への期待と懸念

刑事裁判、証拠の謄写費用に数百万円?面会に往復6時間かかることも…「IT化」への期待と懸念

政府が2020年7月に閣議決定したIT新戦略に捜査や公判などの刑事手続のIT(デジタル)化が盛り込まれたことを受け、法務省は3月に「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」(座長:小木曽綾氏)を立ち上げ、議論が進んでいる。 日本弁護士連合会(日弁連)は6月30日、東京都内で報道機関向けのセミナーを開催し、刑事手続のIT化に期待することや注意点について説明した。 ※写真は河津博史弁護士(左)、和田恵弁護士(6月30日、東京都内、弁護士ドットコム撮影)

証拠の謄写費用に「30〜40万円」、数百万になることも

日弁連が特に注目している論点の1つが証拠開示のデジタル化。現状は、証拠が紙媒体のため、謄写(コピー)費用や手間が膨大にかかっているという。弁護士による有志団体が電子データによる証拠開示を求めて、政府に要望書を提出する動きもある。日弁連の刑事調査室嘱託を務める和田恵弁護士(東京弁護士会)によると、謄写費用に30から40万円かかることは珍しくなく、場合によっては数百万円かかることもあるという。1枚あたりの謄写費用は都道府県によって異なるが、東京では白黒が30円、カラーが60円。

私選の場合、謄写費用は依頼者の負担。国選の場合、基本的には国の負担で、法テラスによる補填もある。しかし、法テラスが定める謄写費用の支払い要件をみたしていない場合(否認事件など)は、200枚を超える謄写以外は費用が出ないため、弁護人が自己負担する場合もあるという。自己負担額は「だいたい5000円前後になる」(和田弁護士)といい、カメラで証拠を撮影する弁護人もいるという。

謄写以外にも証拠入手までにかかる時間の問題もある。和田弁護士が2021年に担当したある事件では、4月28日に検察官から証拠開示の連絡を受け、4月30日に郵便で謄写を申請。謄写完了の連絡を受けたのは、開示連絡から半月以上あとの5月14日だった。

和田弁護士は「証拠のデジタル開示が実現されれば、検察官から開示の連絡を受けた時点で、すぐにデータを受け取り、他の弁護人とも共有できる。謄写費用も基本的にかからない」と指摘。また、電子データ化により、紙媒体では不可能だった証拠のキーワード検索ができるようになるなどの可能性もある。

面会のために「往復6時間」、小さな子どもや家族の負担も…

日弁連は、被疑者・被告人との接見交通のIT化も期待している。現状は、弁護人が警察署や拘置所などに直接行かなければならず、ビデオ電話などによる面会は認められていない。和田弁護士によると、東京都の八丈島の警察署に行かなければならない場合、コロナの影響で飛行機が1日2便に減便されているため、被疑者は逮捕直後に弁護人に会うことが難しい状況にあるという。また、青森県むつ市にある法テラスむつ法律事務所から青森刑務所まで面会に行くためには、車で往復4時間(降雪時は6時間)かかるという。

和田弁護士も2011年から2014年までの3年間、法テラス茨城(水戸市)でスタッフ弁護士として勤務していたころを振り返り、「法テラスから茨城県内にある各警察署まで、車で1時間以上かかった。移動時間がかかることによって、身柄引受人と会ったり、準抗告を申し立てたりするための時間が削られてしまう」とした。

ビデオ電話などによる面会が可能になれば、弁護士だけでなく、家族や友人の面会への好影響も期待できるという。和田弁護士は、「拘置所の面会時間は平日の8時から17時。仕事や学校などの時間と重なり、家族が面会に行けない場合もあるし、会えても時間は15分から20分程度。小さな子どもが親と面会したい場合も、刑事施設に出向かなければいけない」と話した。

IT化によって「国民の権利保護が後退することがあってはならない」

日弁連の刑事調査室室長であり、法務省の検討会の委員も務める河津博史弁護士(第二東京弁護士会)は、IT化への期待の一方で、「IT化によって、国民の権利保護が後退することがあってはならない」と話した。

オンラインによる証人尋問等について、河津弁護士は、「証人が、被告人の面前で具体的な嘘をつくことは難しいが、画面越しでは、心理的に嘘をつきやすくなるのではないか」と懸念を示した。また、被告人の挙動、視線の向きなどを観察しながら尋問することができなくなる点も踏まえ、「(証人が海外にいるなどの事情がある場合を除いて)安易に認めることがあってはならない」とした。

公判期日へのオンライン出頭についても「画面を通じて得られる映像と音声の情報は、現場で得られる情報よりも制限されてしまうことは否定できない」ともした。






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