「報酬が低い」の不満が9割、「手続きが複雑」も多く 法テラスに関するアンケートvol.3
弁護士ドットコムタイムズでは、全国の弁護士を対象に法テラスとの契約状況や不満点などを尋ねるアンケートを実施し、523人から回答を得た。調査結果を3回に分けて紹介する(調査実施:2021年6月)。 3回目は、代理援助を利用して受任しようとした際に、取下げを求められた、または不開始決定を受けた経験の有無や、法テラスに対する不満点などを聞いた結果を紹介する。 ※アンケート監修:河内良弁護士(大阪弁護士会)、谷口麻有子弁護士(鳥取県弁護士会)
25%以上が代理援助の「取下げ請求・不開始決定」を経験
民事法律扶助の契約について、「契約している」「過去に契約していたが解約した」とした回答者(466人)に、代理援助を利用して受任しようとした際、不開始になることを示唆されて取下げを求められた、または不開始決定を受けた経験の有無を尋ねた。
どちらか、もしくは両方経験した人は、28.4%だった。
「収入要件」理由の取下げ請求・不開始決定が最多
取下げの請求や、不開始決定を経験した人(132人)に対し、理由について、複数回答可能な形式で尋ねた。
「収入等が一定額以下であること」の要件を理由に、取下げの請求、不開始決定を受けたとの回答が59.8%で最多。「勝訴の見込みがないとは言えないこと」の要件が36.4%となった。
その他の自由回答として、以下のような理由があげられた。
・援助する金額が、被援助者の得られる利益に照らして経済的合理性がない
・先行事件の立替金償還が滞っている
・子の氏の変更で利用に対して、『離婚に付随する』との理由
90%以上が報酬に不満
回答者全員(523人)に法テラスに対する不満や、改善して欲しい点を、複数回答可能な方式で尋ねたところ、92.0%が「弁護士に対する報酬が低いので、報酬額を引き上げて欲しい」を選んだ。ついで「法テラスを利用する際の手続きが複雑なので、手続きを簡素化して欲しい」(55.8%)となった。
「審査委員が報酬等を決定する際に参照する『民事法律扶助業務必携』が一般の契約弁護士に開示されていない」(41.9%)、「資力要件が甘いため、特に地方ではほとんどの人が要件を満たしてしまう」(38.0%)にも多くの回答が集まった。
その他の回答には、以下のようなコメントが寄せられた。
【費用・サービス関連】
・依頼者に原因がある理由で辞任した場合でも、着手金の7割~9割の返金を求められることがある。
・法テラス利用者と一般の依頼者に対し、同一のサービス提供をするのは不平等。
・弁護士報酬を引き上げるだけでなく、免除要件の緩和や一部免除により、生活困窮者の司法救済も強化するべき。
【手続き・運用関連】
・IT化が進んでおらず、書類の受け渡しがFAXか郵送のため、依頼者も不便に感じている。
・相談者への説明や契約手続きが弁護士任せになっており手間がかかるので、法テラスが説明から手続きまで行なってほしい。
・周知のない運用変更や、業務方法書に記載がない基準で運用するなど、運用に予測可能性がない。
・勝訴見込みを判断するため、援助開始決定前に完成した訴状の提出を求めてくるなど、弁護士業務に理解がない職員がいる。