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代表弁護士がパワハラ、元勤務弁護士へ200万の賠償命令

代表弁護士がパワハラ、元勤務弁護士へ200万の賠償命令

神奈川県川崎市内にあった法律事務所(市外に移転済み)に勤務していた弁護士(以下、元勤務弁護士)が、事務所と代表弁護士に、未払いの賃金や、暴行や暴言などのパワーハラスメントによる慰謝料の支払いを求めた訴訟で、横浜地方裁判所川崎支部(飯塚宏裁判長)は4月27日、業務委託報酬として300万円、パワハラに対する慰謝料として220万円(うち弁護士費用20万円)の支払いを、事務所と代表弁護士に命じる判決を言い渡した。元勤務弁護士側は、労働者性が認められなかったことなどに不服があるとして、5月10日に控訴した。代表弁護士側は取材に応じていない。

判決によると、元勤務弁護士は、2011年12月、事務所に入所。入所2年目の2013年7月に月額報酬をゼロとする雇用条件が提示されて同意したほか、同年から暴言や暴行といったパワハラを代表弁護士から受けるようになった。

元勤務弁護士は2016年3月に事務所を退所し、翌月に代理人を通じ、2016年3月から遡って2年分の未払い賃金799万9200円と、割増賃金943万5190円、パワハラに対する慰謝料300万円の合計2043万4390円を、事務所と代表弁護士に請求する旨を通知した。

通知を受けた代表弁護士は、支払いを拒否し、2016年6月、元勤務弁護士に対する債務不存在の確認を求め、横浜地裁川崎支部に提訴。また、勤務弁護士が在籍中に事件を放置したり、虚偽報告などをした結果、顧問先や顧客を失い、賠償金を負担したなどとして合計550万円の損害賠償も請求した。元勤務弁護士側は、同年9月に反訴を提起した。

業務委託報酬として300万の支払い認める

訴訟の中で、元勤務弁護士側は、入所2年目の途中までは固定給が支払われており、固定給が支払われなくなった後も、担当する事務所事件が増加し、2015年5月ごろから出退勤の報告が義務付けられるなど、事務所入所当時よりも代表弁護士からの指揮監督が強化されるなどしたため、元勤務弁護士は「労働者」に該当し、未払い賃金が発生すると主張した。

対して、事務所側は、「元勤務弁護士とは当初から雇用契約を結んでいない」「最低限の指導注意しかしていない」などと反論した。

元勤務弁護士の労働者性をめぐり、判決では次のような事実を認定した。

・契約内容の変更について、元勤務弁護士が代表弁護士に対して特段の異議を述べたことはなかった。

・元勤務弁護士の入所当初より、業務内容の定めや服務規律がなく、具体的な指示命令がされた形跡がなかった。

・法律事務所が法人化に合わせ社員になった際、弁護士国民健康保険組合に対して厚生年金に加入せず、国民健康保険も「変更なし」とする手続きを自ら行なった。

これらの事実などを踏まえ、横浜地裁川崎支部は、元勤務弁護士について、雇用関係はなく労働者性を有していないと判断した。

一方、元勤務弁護士が事務所の社員だった際に交わされた、期間の制限を決めない「報酬なし」の契約条件は、社員脱退後には適用されないと判断。社員を脱退した2014年11月から、実際に事務所を退所した2016年3月までは業務委託契約にあたるとして、相当な業務委託報酬として、300万円の支払いを事務所に命じた。

「懲戒請求で人生奪う」などのパワハラ認定

判決では、2013年から2016年にかけての代表弁護士によるパワハラについても、主に以下の事実を認定した。

・ミスをした元勤務弁護士に対し、胸ぐらを掴み「嘘つきやろうが」などと大声を出しながらロッカーに叩きつけた。

・指示棒やスリッパで叩いた。

・依頼者からの解任や懲戒請求の可能性がある旨を発言し「無資格者にしてやるぞ」「人生奪うことができるぞ」などと執拗に叱責した。

・出退勤の時刻が分かるように事務所内の時計を撮影して報告するよう求めたほか、事案管理表を作成・報告させた。

判決では、代表弁護士が長期間にわたりハラスメントを繰り返したと認め、元勤務弁護士の精神的苦痛に対する慰謝料として200万円、弁護士費用として20万円の合計220万円の支払いを代表弁護士に命じた。

一方、代表弁護士側の請求はいずれも棄却された。

代理人弁護士 「労働者性の否定は残念」と控訴

元勤務弁護士の代理人を務めた伊藤諭弁護士と髙木亮二弁護士は判決について、「報酬なしの契約内容がありながらも、(社員脱退後の)業務委託報酬が認められたのは評価できる」とした。パワハラの認定を巡っては、「同種の事案と比較して高額な慰謝料が認められ画期的」と評価した。

一方、「(厚生年金に加入しないなど)外形的な事実により労働者性が否定された。元勤務弁護士が担当していた事件のほとんどは事務所事件で、出退勤の時間の報告なども義務づけられていた」と指摘。一部のパワハラ行為が認められなかったことも含めて、元勤務弁護士側は5月10日に東京高等裁判所に控訴した。

代表弁護士、コメントせず

弁護士ドットコムタイムズでは、判決や控訴したかどうかについて代表弁護士にコメントを求めているが、5月27日までに回答を得られていない。

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