逮捕等「効果なし」「問題悪化」が8割 薬物問題を抱える家族、アンケート結果を公開
大麻の取締り強化などについて議論する厚生労働省の有識者会議「大麻等の薬物対策のあり方検討会」が今年1月に始まった。担当するのは、厚労省の医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課だ。検討会では「使用罪」に関する議論もおこなわれていて、今夏を目処に報告書をとりまとめる予定。
これを受け、大麻使用罪の創設に反対の立場を示す薬物依存症者の家族で構成される任意団体「関西薬物依存症家族の会」は、大麻に限らず薬物問題を抱えている人がいる家族に対してWEBによるアンケート調査(期間:2021年3月23日~3月26日)をおこない、169人から回答を得た。
調査結果では、当事者が逮捕・補導されたり、矯正施設に収容されたりした場合、薬物問題の解決に「効果はなかった」「むしろ問題が悪化した」と回答している割合が8割近くなった。
また、当事者の逮捕などの影響で精神的に追い詰められるなどし、うつ状態になったり、人と会えなくなったりする状況に追い込まれている家族がいることも分かった。
当事者の逮捕等「仕事を続けられなくなった」「引っ越した」家族も…
アンケートの調査結果によると、回答者169人のうち「薬物依存症の当事者が逮捕、補導、収監された経験」が「ある」と回答した人は140人だった。
このうち「逮捕、補導、収監」が、薬物問題の解決に「効果があった」と回答した人は17人にとどまった。もっとも多かったのは「効果はなかった」(85人)、続いて「むしろ問題が悪化した」(25人)で、プラスの効果がなかったという回答が、約8割となった。
そのほか、「逮捕というよりその後医療に繋がったことで効果があった」などの記述があった。
また、当事者の「逮捕、補導、収監」によってどのような影響があったかという質問(複数回答可)については、「うつ状態になった」(100人)、「人と会えなくなった」(93人)、「家庭内で争いが増えた」(78人)と続いた。
ほかに、「家計が苦しくなった」(54人)、「地域にいられなくなり引っ越した」(23人)、「仕事を続けられなくなった」(19人)との回答もあり、家族が経済的な影響も受けていることが明らかになった。
「どこに相談したら良いかわからなかった」
薬物依存症であれば、病院での治療や支援、自助グループ等で仲間と出会うことなどで、薬物を使わない生き方ができるようになる可能性はあるが、誰にも相談できずに苦しんでいたり、実際に相談に行くまでに時間がかかったりした家族もいる。
調査結果によれば、家族の薬物問題を知ってから依存症の回復支援機関や自助グループなど、なんらかの機関に相談に行くまでにかかった年月は「1年未満」(48人)、「1年以上3年未満」(43人)、「3年以上5年未満」(31人)、「5年以上10年未満」(31人)、10年以上(16人)と続いた。
相談をためらった理由(複数回答可)に関する質問については、「どこに相談したら良いかわからなかった」がもっとも多く(123人)、「相談できるものだと知らなかった」(68人)との回答も多かった。一方、相談することに「特にためらいはなかった」と回答した人も18人いた。
大麻に限らず、違法薬物使用者の家族が相談できる機関の周知や家族へのケアの必要性を伺わせる結果となった。
アンケート結果は、「関西薬物依存症家族の会」ホームページで公開されている。
※画像はアンケート調査結果(「関西薬物依存症家族の会」ホームページ)より