著名弁護士の本棚〜実務で使うおすすめ書籍5選〜 【ネット問題】清水陽平弁護士
各分野の著名弁護士にインタビューし、若手や初学者向けの「おすすめ書籍=推し本5冊」を選んでもらいました。(弁護士ドットコムタイムズVol.67<2023年6月発行>より)
少し前まで書籍はほとんどなかった
ネットの誹謗中傷が社会問題になっている。この問題に最初期からかかわっているパイオニアのひとりが清水陽平氏だ。
「15年ぐらい前までは、『ネット投稿なんて“便所の落書き”。気にする必要はない』という風潮が強く、本がなかったんです。2ちゃんねる(当時)の投稿削除について、出版社に企画を持ち込んだんですが、需要がないと断られたこともありました」
そのため、「自分で実践して書く」を繰り返してきたという。そんな清水氏が編著者の『最新事例でみる 発信者情報開示の可否判断』は、2022年の法改正に対応。非訟手続を使った新制度について、通常は表に出ることがない豊富な事例を掲載し、勘所が掴めるようにつくられた1冊だ。
既存の法律理論を使って、新分野を開拓する
『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務』は、索引に裁判例からの引用があって、事例を探しやすいという。
新しい分野では、既存の法律理論をどう展開していくかが重要になる。ネット分野では、出版差止めに関する事例が参考になったという。特に「『石に泳ぐ魚』事件」も担当した佃克彦弁護士の2冊が重宝したそうだ。現在は版を重ね、ネットの問題にも対応している。
「この分野をやる人はみんな持っていると思いますが…」と話すのは、『プロバイダ責任制限法』。同法に関する唯一の総務省名義の本だ。
ネット中傷の深刻さがわかる本としては、身に覚えのない事件の殺人犯だとして、1999年から被害を受けてきたお笑い芸人スマイリーキクチ氏の『突然、僕は殺人犯にされた』(竹書房)を挙げた。
【清水弁護士の5冊&ひとこと】
- 『最新事例でみる発信者情報開示の可否判断』清水陽平/櫻町直樹/最所義一/中澤佑一/船越雄一・著 新日本法規出版/発行・2022年11月 4,950円(税込)第一線の弁護士が共同執筆
- 『最新判例にみるインターネット上の名誉毀損の理論と実務 第2版』松尾剛行/山田悠一郎・著 勁草書房/発行・2019年2月 6,050円(税込)名誉毀損と表現の自由 豊富な事例から境界を解説
- 『プライバシー権・肖像権の法律実務 <第3版>』佃克彦・著 弘文堂/発行・2020年10月 6,160円(税込)肥大化する「プライバシー」表現の自由とのバランスを探る
- 『名誉毀損の法律実務 <第3版>』佃克彦・著 弘文堂/発行・2017年6月 6,380円(税込)名誉毀損問題の第一人者が執筆ネットの誹謗中傷にも対応した最新版
- 『第3版 プロバイダ責任制限法』総務省総合通信基盤局消費者行政第二課・著 第一法規/発行・2022年10月 5,280円(税込)逐条解説はもちろん、施行規則の解説なども網羅
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清水陽平弁護士
法律事務所アルシエン。東京弁護士会。60期。