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ブラジル人初の弁護士「日本は弁護士が遠い存在」 照屋エイジ氏の問題意識

ブラジル人初の弁護士「日本は弁護士が遠い存在」 照屋エイジ氏の問題意識

【本記事は2021年1月19日に公開したものです】2018年に在日ブラジル人として初の弁護士となった照屋エイジ弁護士(28)は、ブラジル・サンパウロに生まれ、8歳の時に出稼ぎの母に連れられて来日した。 ブラジルは、2億1000万人の人口に対し、弁護士人口が120万人を超える。照屋弁護士は、日本の在日外国人に対する法的支援の課題として、言語の問題に加え、弁護士との距離の遠さを挙げる。在日外国人支援の根底にある問題意識や、日本の法曹界に対する捉え方について聞いた(インタビュー日:2020年11月24日)。

「弱い立場の外国人を救いたい」司法試験にストレートで合格

──照屋弁護士が来日した経緯と、その後の生活について教えてください。


1999年頃のブラジル通貨危機がきっかけです。ブラジルにおける母の資力が十分でない中、日本で就労経験のある叔父が「日本は身入りが良いから」と母に勧めました。そして、2000年、8歳の時に母とともに来日し、埼玉県川越市で生活を開始しました。

母が女手一つで育児をする生活は、楽ではありませんでした。母は、冷凍食品の工場などで派遣社員として、不安定な就労環境のもと働いていました。朝早くから夜遅くまで働き、私が風邪を引いた時も「会社を休むと次は契約が更新されないかもしれない」と働きに出ました。母をみる中で、外国人の立場の弱さを感じました。


──弁護士を目指したきっかけは、法曹界を舞台にしたテレビドラマと聞きました。


ドラマの中で、会社が社員を不当に解雇するシーンがありました。悪びれることなく弱者を切り捨てる会社側に弁護士が立ち向かう姿を見て、弱い立場の人々を救う弁護士になりたいと子供心に思いました。


──司法試験にストレートで合格した原動力はなんだったのでしょうか。


原動力の一つとなった経験は、学生時代に取り組んだ、外国人の子どもの日本語学習を支援するサークル活動です。そこで出会う子どもや親との関係は一時的なもので、継続的な関係には発展しません。子どもたちの未来を考えるとどうしても、無責任な立場となります。そこで、弁護士になり、人の一生を左右する事件を通じて外国人の環境を改善することで、子どもが置かれている環境を変えるお手伝いをしたいと思いました。

依頼者と一時的な関係である点は、弁護士となった今も大きくは変わりませんが、学生時代に比べると比較的長くコミュニケーションが取れるようになったと感じています。受任事件が終了した後も、出産の報告をもらうなど、継続的な関係を築く方もいます。

外国人の労働問題「搾取の根は言葉の問題」

──劣悪な労働環境に置かれる外国人の報道が相次いでいます。背景にはどのような問題がありますか。


劣悪な労働環境に置くことを搾取と考えると、こうした搾取の根っこには、言葉の問題が大きく関係しているように痛感します。例えば、外国人労働者が、就労先から日本語で書かれた書面へのサインを促され、内容を正確に理解しないまま提出したところ、実は労働者にきわめて不利な内容の退職合意だったという相談がありました。外国人労働者が日本語を理解していないケースや、仮に、労働者が言葉を理解できても、その内容が法的に正しいものかどうかについて相談できないことで、このような問題が起きます。

平時は海外移民の労働力に助けてもらいながら、最終的にだますやり口をする一部の会社のあり方は、端的には「ズルい」と思います。搾取の憂き目に遭った在日ブラジル人の中には、外国人への不当な扱いに対し、「日本は外国人に対して冷たい」という被差別意識を強くする方も、残念ながらいるのが現状です。

──弁護士として活動する中で、いちばん憤った経験はなんですか。


2020年6月頃に起きた生活保護行政の水際作戦です。岐阜県内に住むあるブラジル人男性は、何度も市役所に通い、窓口で生活保護の申請を申し出ていました。ところが、窓口の担当者は、申請書類を渡さずに、毎回帰らせていたのです。

連絡を受け、市役所に向かうと、男性は片言の日本語で申請したい旨を伝えており、意図は伝わっていたはずです。市役所の担当者は、言葉がわからなかったのではなく、聞く耳を持っていないと感じました。外国人も、税金を払い、日本社会の一市民として生活していることを考えると悲しくなりましたし、憤りも感じました。

「日本は弁護士が遠い存在」次世代を育て改善したい

──日本の弁護士業界については、どのように感じていますか。


ブラジルに比べると、日本は弁護士が遠い存在です。ブラジルは、2億1000万人の人口に対して、弁護士人口が120万人を超えています。対して日本では、法律相談ができる場所が少ないため、日本にいる外国人は、日本人以上に、弁護士にアクセスするのが難しいと感じています。

在日ブラジル人の人口を考慮すれば、在日ブラジル人に開かれた法律事務所はもっとあっても良いと思います。外国人の問題を精力的に扱う弁護士も多いですが、未だ在日外国人の隅々に適切なリーガルサービスが行き渡っているとは言えません。

──弁護士キャリアの中で、外国人の法的支援をどのように変えていきたいですか。


在日ブラジル人の言語や司法アクセスの問題を改善していく必要があると考えていますが、私個人や事務所で扱える案件は、マンパワーの限界があります。まずは、さまざまな事件を解決する中で、ブラジル人家庭の環境を改善する手伝いをして、そこから次の世代を育てたいと思います。例えば、次世代のブラジル人から弁護士になる人が増えれば、日本におけるブラジル人の司法アクセスがもっと良くなります。

私自身、環境に恵まれて、弁護士になりたいという夢を叶えることができました。今度は、ブラジル人コミュニティに、その恩返しをしなければなりません。

※写真提供:照屋エイジ弁護士

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