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「やりがいのある仕事を作ることが使命」 日弁連・荒中会長インタビュー(下)

「やりがいのある仕事を作ることが使命」 日弁連・荒中会長インタビュー(下)

【本記事は2021年1月15日に公開したものです】日本弁護士連合会の荒中(あら・ただし)会長が、弁護士ドットコムタイムズの取材に応じ、法曹養成をめぐる課題などについて見解を示した。従来の法曹養成について「若い人のための制度になっていない」と指摘した上で、法学部入学から司法修習の修了までの期間を最短6年まで短縮する「法曹コース」に期待感を提示。また、児童相談所で業務を行う弁護士やスクールロイヤーが増えつつあるとして、「誇りをもって仕事に取り組む弁護士の姿を、日常生活の様々な場面で身近に見てもらうことで、弁護士を志望する人が増えるのではないか」と強調した。(2020年12月22日インタビュー実施)。

2200〜2300人の学生を手塩にかけて育てる

ーー新型コロナウイルスの感染拡大への対応以外で、特に任期中に取り組みたいと考えている課題はありますか。


民事司法制度改革と法曹志望者の増加に向けたの取り組みが、これから大きな正念場を迎えると考えています。

民事司法改革に関しては、訴訟のIT化が、法曹界にかなりのインパクトを与えると思います。国民が裁判を受ける権利を保証しながら、弁護士が円滑に業務を行える状況にしていくことが、今後の執行部の大きな役割だと思います。

地方の弁護士には、「都心部の弁護士が地方の事件まで取り扱うようになるのでは」という危機感があるかもしれません。そのような危機感を取り除き、訴訟のIT化は国民にとって便利で、弁護士にとっても有用であることを説明していくことが、求められると思います。

法曹養成に関しては、法科大学院の志望者、司法試験の受験者の数が減少しているという問題を抱えています。背景には法科大学院が入学定員を削減した上で、厳正な選抜が実施され、入学者が減少していることも影響しているでしょう。

ここ数年、法科大学院の入学者数は、1600人から1800人ほどで推移していますが、不十分だと考えています。定員が約2500人であれば、厳正な入学者選抜を経て約2200〜2300人が入学し、入学した学生一人ひとりを手塩にかけて育てていくことが重要です。手厚く育成される状況を対外的に見せることで、法科大学院に明るい兆しが戻ってくるのではないでしょうか。

ーー入学者数を2200〜2300人に増やした上で、手塩にかけて育てていくためには、法科大学院の教員を増やすなど、教育体制の整備が必要になるのではないでしょうか。


大学間の連携が進んでいる現状で、教員の増員などを行わなくても、優秀な学生を育成できる環境が整っていると考えています。

すでに新潟大学法学部と東北大学の法科大学院が協定を結んでカリキュラムの内容を協議するなど、大学間での連携も実現しています。広島大学と神戸大学の法科大学院も協定を締結しており、広島大学では司法試験合格者が増加するなど、一定の成果も上がってきています。

権利擁護を業務に変えることが役割

ーー法科大学院を目指す人が減少している要因をどのように考えていますか。


法曹養成が時間的、経済的に負担の重い制度になっていた点と、弁護士になれた後も収入に不安があるという点が大きいのではないでしょうか。

法曹養成に関しては、従来、大学入学から法科大学院を経て、司法試験を受けるまで8年ほどかかり、長い期間と多額の費用が必要でした。法科大学院を3月に卒業してから、司法試験受験・合格発表を挟んで、11月に司法修習が始まるまで、約8か月かかる「ギャップターム」と呼ばれる問題もありました。

このような状況に対応するため、「法曹コース」という新たな法曹養成制度が始まりました。法曹コースでは一定の成績を修めると、法学部の入学から3年で法科大学院に進学し、法科大学院も最短2年で卒業できます。2023年からは、法科大学院在学中に司法試験を受験することも可能となり、大学入学から司法修習の終了までの期間が、最短6年に短縮されます。時間的、経済的負担を軽減する制度設計になったと思います。

また、東北大学法科大学院では奨学金の給付額を拡充するなど、学生を援助する仕組みも整備されています。法曹養成にかかる期間を短縮し、費用を援助する仕組みを設けることで、法科大学院を目指す人が増えるのではないでしょうか。

収入への不安に関しては、会長選挙の時に私は「権利擁護を業務に変える」ことを公約の1つしてかかげました。弁護士としてのやりがいがある仕事を作っていくことが私の使命だと考えています。

児童相談所で業務を行う弁護士やスクールロイヤーなどが増えていますが、今後は自治会や、地域で高齢者を支援している「地域包括支援センター」などについても、顧問弁護士として、積極的に相談を受けたり支援したりする余地があると思います。

誇りをもって仕事に取り組む弁護士の姿を、日常生活の様々な場面で身近に見てもらうことで、弁護士を志望する人が増えるのではないかと思います。

ーー2020年11月の会見では、司法試験合格者1500人の状況について、見直しの必要性を検証すると話されていました。検証の状況は進んでいるでしょうか。


日弁連の法曹養成制度改革実現本部に40人ほどのグループを作り、法曹人口に関する各種論点項目についての検証を行い、意見をまとめるために議論をしています。

多様な意見を吸い上げながら意見をまとめるべく、法曹養成に関わっている会員のみならず、合格者数減員を求める弁護士会会長共同声明を公表した当時の弁護士会の会長などに議論に加わってもらっています。

2021年の秋頃には意見書の素案を作成して、各弁護士会に照会する流れになると思います。任期中に方向性を示すことを念頭に準備を進めています。

荒中弁護士プロフィール

1979年東北大学法学部卒業、1982年弁護士登録(司法修習第34期)。これまで2008年仙台弁護士会会長、2009年日本弁護士連合会副会長、2012年・2013年事務総長などを歴任。2020年・2021年度の会長を務める。

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