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「コロナ不況対策で法テラスの費用免除拡大を」 日弁連・荒中会長インタビュー(上)

「コロナ不況対策で法テラスの費用免除拡大を」 日弁連・荒中会長インタビュー(上)

【本記事は2021年1月14日に公開したものです】日本弁護士連合会の荒中(あら・ただし)会長が、弁護士ドットコムタイムズの取材に応じ、新型コロナウイルスの感染拡大に対する取り組みなどについて語った。裁判期日の延期が相次いだ状況に対し、会長声明の公表や裁判所への働きかけを行なったことについて、「(期日の多くが中止になった当初とは違い)裁判所はできる限り期日を開くという姿勢に変えてくれた」と強調。今後に向けては、感染拡大が続き、生活が苦しくなる人が急増することを懸念し、「法テラスを基盤整備した上で、償還免除を積極的に行うことが必要だ」と述べた。荒会長のインタビューを2回に分けてお送りする(2020年12月22日インタビュー実施)。

検察庁法改正をめぐり現職検察官から悲痛の声


ーー2020年4月の就任からこれまでを振り返り、感想を聞かせてください。


就任直後に新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言が発令され、予定していた行事やイベントの多くが中止・延期になりました。全国で感染拡大による影響が広がる中で、日弁連の活動も制約を受け、就任前には想像もしていなかった状況になりましたが、「このような状況だからこそ我々の実力が試される」と、前向きに捉えていました。

特に印象的だったトピックは、検事長の勤務延長に関する閣議決定と、検察庁法の一部改正をめぐる議論です。会長就任当初から「三権分立を脅かす重大な問題」と、認識していました。法律家団体として絶対に看過できないと考え、就任直後の4月に会長声明を公表したほか、臨時記者会見を開くなど、意見表明に積極的に取り組みました。

検察庁法の一部改正をめぐっては、現職の検察官やOBからも悲痛な声が聞こえてきましたし、インターネット上でも大きな問題となりました。意見表明もあって、私たちが思っていた以上に、多くの方と危機感を共有できたと思います。

ーー直接選挙になって以降、仙台弁護士会から選出された初の会長となりましたが、東京大阪以外から選出された会長として、どのような視点や特徴があるのでしょうか。


単に地方出身ということでなく、日弁連の副会長や事務総長も務めたので、地方での現場の経験と、日弁連での経験の両方を持っている点が、私の強みになると考えています。

選挙時には旭川から沖縄まで支援してもらい、多くの弁護士が今まで以上に「自分が選んだ会長だ」という意識が強くなったと思います。そのような意識のもとで、苦言もあれば提案をもらうこともあり、その点は、地方出身の会長ならではのよさではないでしょうか。

また、弁護士として、刑事事件にも取り組んできたので、刑事司法改革にも力を入れたいと考えていますが、地方の弁護士会の協力が絶対に必要です。日本の刑事司法制度は、被疑者・被告人の身柄を長期間拘束する点が「人質司法」などと問題視されていますが、勾留請求の却下率が東京では高く、地方では低いという格差があるようです。準抗告を積極的に行うよう、地方に働きかけていきたいと考えています。

法テラスの基盤整備で費用免除拡大を


ーー新型コロナウイルスの感染拡大に対する取り組みと、取り組みへの評価をお聞かせください。


日弁連では、(コロナ拡大前にできた)被災地支援の方法などに関する規程で、感染症のまん延も災害に位置付けていました。災害支援や貧困問題、消費者問題など、関連する委員会の委員長などが参加する「COVID-19対策本部」を4月中旬に立ち上げ、対応策を検討してきました。

具体的な取り組みとしては、まず、電話での相談対応を徹底的に行いました。すでに中小企業向けの窓口として「ひまわりほっとダイヤル」があったので、中小企業からの相談対応に活用しました。個人向けの相談窓口としては、全国の弁護士会と連携して、全国統一ダイヤルを設置しました。

会長声明の公表も積極的に行いました。2020年度は現在までに、50本近くの会長声明を公表し、そのうち、16本が新型コロナウイルスに関連する会長声明でした。

特に、悪質なファクタリングの被害撲滅に向けた会長声明は一定の効果があったと感じています。新型コロナウイルス感染症の拡大により多くの人の生活が苦しくなる中で、個人向けの「給与ファクタリング」と事業者向けの「偽装ファクタリング」の取締強化を求める2本の会長声明を公表したところ、実際に悪質なファクタリング業者を利用してしまった人からの相談もあり、被害の掘り起こしを行うこともできました。

また、裁判期日の延期が相次いでいたので、刑事裁判に関しては4月に、勾留の執行停止や取消し、保釈許可の柔軟な実施、延期された公判期日の早期指定などを求める会長声明を公表しました。民事事件に関しては、声明の公表にはいたりませんでしたが、早期に期日を開くよう、裁判所との協議を行いました。

期日延期に関しては、裁判所も忸怩たる思いがあったのでしょう。我々の要請を受けて、各地方の実情を踏まえながら、できる限り期日を開くという姿勢に変えてくれるようになりました。

ーー新型コロナへの対応として今後はどのような対策が必要でしょうか。


新型コロナウイルスの感染拡大による影響は数年続く可能性もあると懸念しています。そのため、中長期的な息の長い対策が求められます。

今後、店舗・企業などの廃業や大幅な人員削減が相次ぎ、職を失って生活が苦しくなる人が急増する恐れがあるにもかかわらず、政府は先回りした対策が十分にできていないと思います。

必要な対策として、日本司法支援センター(法テラス)の代理援助について、償還免除の対象者を広げるなど、より法テラスを利用しやすくするべきだと考えています。

幅広い償還免除が実現し、多くの人が相談に訪れるようになっても、安定的に制度が運用されるように、人員や予算の拡充など法テラスの基盤整備も行う必要があります。

法テラスの基盤整備をした上で、償還免除を積極的に行うことで、感染拡大による被害が長期化した場合も対応できると考えています。

ーー法テラスの弁護士報酬基準は一般的な弁護士報酬基準より低いとされているため、償還免除の拡大で利用者が増加することに、懸念を示す弁護士もいるかもしれません。


もちろん法テラスの報酬基準を引き上げることは重要ですが、法テラスが苦しい状況に置かれた人のための制度である以上、まずは利用者の負担を軽減しなければなりません。

利用者の負担を軽減して、法テラスを利用しやすくするとともに、弁護士が適正な報酬を得られるような社会状況を作ることが、会長としての役割だと考えています。

適正な報酬基準となるよう引き続き取り組みを行っていきますが、まずは法テラスの基盤整備を進めた上で、支援にかかった費用の償還免除や減免を広げることを優先する必要があると思います。

荒中弁護士プロフィール

1979年東北大学法学部卒業、1982年弁護士登録(司法修習第34期)。これまで2008年仙台弁護士会会長、2009年日本弁護士連合会副会長、2012年・2013年事務総長などを歴任。2020年・2021年度の会長を務める。

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