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Web会議システムを活用する弁護士に聞く 民事裁判IT化に向けた弁護士の準備と心構え

Web会議システムを活用する弁護士に聞く 民事裁判IT化に向けた弁護士の準備と心構え

【本記事は2020年10月5日に公開したものです】今年2月に始まった民事訴訟に関する裁判手続き等のIT化(裁判IT化)は、全国拡大に向けて準備が進められている。共同通信によると、最高裁は9月10日、争点整理手続き等へのウェブ会議の導入について、11月に東京地裁のすべての民事部、年内には全国の地裁本庁すべてに拡大することを発表した。一方、IT利用に関する弁護士からは懸念の声もあがる。弁護士ドットコムタイムズが7月に実施した会員アンケートでは、「利用者が裁判を受ける権利」についての懸念点として、「IT機器の操作熟練度によって、裁判所を利用することへの格差が出てくる」との回答が27.5%にのぼった。民事裁判IT化に向けて、どのような準備や心構えが必要か。福岡地裁の裁判IT化に関するワーキンググループのメンバーを務め、制度の開始当初からウェブ会議を積極的に取り入れている古賀克重弁護士に聞いた(インタビュー日:2020年9月15日)。

──民事裁判手続きのIT化が全国的な広がりを見せていることについて、どのように感じていますか。

最高裁が、裁判IT化を全国の地裁本庁に拡大することを発表したのは、先行する裁判所での実施状況が順調だったためと思われます。開始当初は、ウェブ会議システム「Teams」が起動しにくい時間帯もありましたが、現在は解消し、使い心地に不満はありません。

現在進められている裁判IT化の「フェーズ1」は、誤解を恐れずにいえば、これまでの電話会議がウェブ会議に変わる程度のものともいえます。裁判所から提供された情報によれば、現時点では、Teamsの文書共有機能はあまり活用されていません。とはいえ、遠隔地での裁判であっても、裁判官や、相手の弁護士の様子が見えることにより、コミュニケーションを図る上での安心感が高まりました。

また、新型コロナウイルスの影響もあると思いますが、裁判所が、法改正を待たずに運用面で出頭を不要化する柔軟な姿勢を進めていると感じ、むしろこの点に強い利便性を感じています。

例えば、出廷が法定されている第1回期日は当事者の同意の上で取り消し、第2回期日を実質的な初回期日として双方ウェブ会議で開く運用も活用され始めました。また、ウェブ会議が導入されていない簡易裁判所の一部でも、これまではあまり認められなかった双方不出頭による電話会議も柔軟に採用されていると感じます。

──民事裁判のどのような手続きにウェブ会議が用いられているのでしょうか。

ウェブ会議による裁判期日の持ち方は3つあります。①当事者の一方がウェブ、他方が出頭する手続き(弁論準備手続)、②双方がウェブによる手続き(書面による準備手続)、③双方がウェブにより、事実上の進行協議期日(打ち合わせ)で処理する手続きです。

30分以内の比較的短時間で終わる場合が多いのではないでしょうか。和解協議や労働審判の場合は、一時退席して当事者間で打ち合わせる時間も必要となるため、30分以上になる場合があります。

──ウェブ会議の活用状況を教えてください。

当事務所では、2月からウェブ会議システムを利用し、福岡地裁、大阪地裁、神戸地裁、高松地裁において、十数件の事件で活用しました。11月には広島地裁も予定されています。なお、十数件は事件数であり、利用回数としてはもっと多くなります。

福岡地裁では、7月時点で300件近くの実績があり、他の地裁に比べて積極的に活用しているようです。私自身は、事件の種類を問わずウェブ会議システムの利用を申し入れていますが、相手の弁護士にも反対されることもなく活用できています。

最近は、訴状送達の段階で第1回期日を一応は指定するものの、被告に弁護士がついておりその了解を得られた場合には、第1回期日を取り消して、ウェブ会議による書面による準備手続きに即座に切り替える運用もかなり浸透しているようです。原告事件でさえ、訴状陳述のためだけに裁判所に出頭することが少なくなりました。

──何かトラブルなどはありましたか。

相手方弁護士の事務所内で、Teamsの対応方針が決まっていなかったため、ウェブ会議の開始期日を待たされることがありました。事務所の中で、Teams活用に向けた見解が定まっていない場合は、早めに対応方針を決めておくと良いでしょう。

また、Teamsに慣れていない相手方弁護士が、裁判期日の当日に接続できないケースが複数回ありました。これを防ぐために、裁判所は、裁判期日の前に接続テストをすることを推奨しています。不明点があれば、書記官が丁寧に教えてくれますので、遠慮なく事前相談されると良いと思います。また当日どうしても繋がらない場合は、裁判所も柔軟に対応していて、通信障害が起きた側のみ電話会議に切り替えたりしていますので心配はありません。

──ウェブ会議を円滑に行うために、どのような仕組みづくりが必要ですか。

一人事務所である当事務所は、弁護士の部屋が、事務局の部屋と離れた個室になっています。ウェブ会議に入る15分前には、事務員も含めて社内システムでアラートによる注意喚起をしています。それに合わせて事務員が、弁護士への電話の取次ぎをしない、あるいは入室しない運用にしています。

ウェブ会議を利用した相手方の弁護士の様子でいうと、Teamsの機能を使って執務室の背景をぼかして参加している方もいますし、複数弁護士がいる事務所で大きめの打合せ室で利用している方などがいました。背景が写ってしまうと、本棚などから他の事件などに関するプライバシー漏洩の可能性もあるからです。各事務所の体制に応じて、工夫されているのだと思います。

──民事裁判のIT化について、弁護士は皆肯定的に捉えているのでしょうか。

福岡地裁の裁判IT化に向けたワーキンググループは、裁判所が把握した統計数や不具合の情報や弁護士の経験を共有し、その後、会から各会員に情報提供しています。他地域に比べても、福岡の弁護士はかなり積極的に活用しているようです。

それでも現状では、積極的に活用している事務所と準備が整っていない事務所に分かれていますが、裁判所は、あくまで弁護士の意向に合わせて、ウェブ会議システムを利用するかを決めています。

裁判所は、裁判IT化に対し積極的ですが、当事者や弁護士の理解を得た上で進めることにはかなり意を尽くしており、抵抗感を持っている当事者に無理強いするようなことはないと思われます。

──裁判IT化の拡大に向けてどのような心構えが必要でしょうか。

裁判IT化の流れは、今後の裁判のあり方を変えるものとなるでしょう。将来的には、主張・立証の方法までが変わる可能性があるため、弁護士はそうした将来の変化を見据えて今から備える必要があるのだろうと思います。

実際、当事務所は訴訟件数が比較的多いため、裁判IT化によって、全国各地の裁判所に行き来する移動時間とともに、地元の福岡地裁にもほとんど出頭することがなくなり、今年はかなり業務効率化が進みました。空いた時間で、依頼者への手厚いフォローや事務職員とのコミュニケーションなどを心掛けています。裁判が多い弁護士であれば、業務効率が向上するため、弁護士の「働き方改革」と前向きに捉えてみても良いのではないでしょうか。

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