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死刑執行停止求める決議可決、東弁臨時総会 反対派からも意見相次ぐ

死刑執行停止求める決議可決、東弁臨時総会 反対派からも意見相次ぐ

【本記事は2020年9月25日に公開したものです】東京弁護士会(東弁)は9月24日、東京・霞が関の弁護士会館で臨時総会を開催し、弁護士会として死刑の執行の停止を求める決議案について議論し、賛成多数で可決した。 会場には、東弁の会員弁護士8361人(2020年7月現在)中、委任による出席も含めて2157人の弁護士が決議に参加した。実際に会場に足を運んだ弁護士は233人(最終集計による出席者)だった。決議の内訳は、賛成が1199票で、反対が781票、棄権が177票だった。

どんな決議だったのか

東弁の決議案では、「日本社会は早急に死刑制度の廃止に向けて動き出すべきであり、当会は死刑制度の廃止に向けて活動していく」と宣言し、以下のような主張や要望を展開している。

・日本の法律から死刑制度に関する規定が削除されるまでの間、死刑の執行は停止されるべきであり、政府は、直ちに死刑の執行停止を宣言するとともに、可及的速やかに死刑執行停止法案を国会に上程すべきであり、国会は同法案を成立させるべき

・死刑廃止と併せ、死刑に代わる刑罰として、仮釈放のない終身刑の導入を検討すべきである。ただし、終身刑受刑者の改善更生の状況を踏まえて減刑があり得るものとし、社会復帰の可能性を残すことが必要

・国や地方団体は、犯罪被害者やその遺族の権利を回復するための施策の拡充を図るべき

決議の理由としては、誤判・冤罪の危険性を指摘し、「死刑が執行されてから誤判・冤罪であったことが判明しても取り返しがつかない」とした。死刑を廃止したフランスなどで犯罪発生率に大きな変化が見られないとして、「犯罪抑止力を根拠に死刑制度を存続させるべきであるという意見は、科学的論拠を欠き、合理性および説得力を欠く」ともした。

また、2018年12月までに世界142か国が法律上または事実上、死刑を廃止しており、「日本は国連の国際人権規約委員会などから死刑執行の停止と廃止を前向きに検討すべきとの勧告を繰り返し受けている」とした。

臨時総会に出席した弁護士からは、冤罪への懸念や人権保護の観点などから、決議案への賛成意見があがった一方、「被害者遺族に配慮すべき」「会内での議論が不十分」といった反対意見も複数あった。以下、賛成、反対双方の意見を紹介する。

賛成意見

賛成意見としては、河井匡秀弁護士が、「死刑を法制度として維持する以上、死刑冤罪事件を必ず抱え込むことになる。日本の刑事司法制度は自白の偏重、検察官による証拠の不開示、捜査機関による証拠の捏造など、冤罪の救済を著しく困難にさせる根本的な欠陥を抱えている」と指摘。「死刑は終身刑によって代替することが可能。死刑冤罪事件が現実に存在し、防止や救済ができない以上、死刑制度は廃止されなければいけない」と訴えた。

舛田正弁護士は、「世論の圧倒的多数が死刑存置派だと思うが、だからこそ弁護士会が決議をするべき。多数派の意見では救われない少数派を守るために、弁護士自治の制度がある」「凶悪犯罪者にも人権はあり、弁護士会が味方に立たないのであれば、見捨てるのと同義。これは弁護士会の使命だと考えている」と述べた。

児玉晃一弁護士は、入管法改正について国会議員へのロビー活動を行なった経験を紹介し、「議員のところに行くと、『日本弁護士連合会はどう言っているのか』『弁護士会の会長声明は出ているのか』と必ず聞かれる。死刑廃止の問題に個人や任意団体で取り組んでいる方は多くいるが、国会を動かすためには、弁護士会としての意見でなければならない。個人や任意団体の活動では限界がある」とした。

反対意見

決議に反対した北村晴男弁護士は、「被害者や遺族による復讐が当然禁止されているが、『国家が相応の刑を課してくれる』と納得できるからこそ、国民は法に従う。(死刑制度には)そのような説得力がある。残虐な行為をした加害者を国が死刑にしてくれないのであれば、なぜ法制度を守らないといけないのか、そこには何の説得力もない」「日本の弁護士の大部分が死刑を廃止すべきと考えているとの誤解を与える決議は絶対にすべきではない」訴えた。

嶋本雅史弁護士は、「国民の多くは、死刑制度の廃止を少なくとも短期的には望んでいない。凶悪犯罪が今なおたくさん存在するからだ」「弁護士会は凶悪犯罪撲滅のためにエネルギーを使うべき」と述べた。その上で、被害者支援の必要性を訴えた。「死刑廃止を訴えるなら、犯罪被害者支援の具体策を次々を示すべき。それをしなければ被害者遺族から理解を得られない。凶悪犯罪はなくなっていないし、被害者や国民の理解も得られていない。弁護士会の議論すらまとまっていない状況で、統一見解として死刑廃止のための執行停止を宣言することは時期尚早だ」。

岩田修一弁護士は「死刑制度を廃止すべきと思っていても弁護士会として決議することなのか悩んでいる先生方もいる。執行部は議論が熟していると考えているかもしれないが、そんなことはない。決議をすることで、会の分裂を招きかねないという危惧がある」と懸念を示した。

会長のコメント

臨時総会の終了後、東弁の冨田秀実会長は弁護士ドットコムタイムズの取材に応じ、「前年度の執行部から議論を引き継いだが、今回、可決されたことでしっかりと活動を進めていきたい。多くの反対意見も出されたが、十分に耳を傾けながら取り組んでいく」と述べた。

(撮影/弁護士ドットコム、2020年9月24日)

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