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「詐欺的な定期購入商法」は特商法改正で撲滅できるか 被害の実態と今後の課題を消費者問題に詳しい弁護士に聞いた

「詐欺的な定期購入商法」は特商法改正で撲滅できるか 被害の実態と今後の課題を消費者問題に詳しい弁護士に聞いた

【本記事は2020年9月23日に公開したものです】「化粧品を『お試し価格』で購入したら、なぜか『定期購入』になっていて、高額な請求を受けた」。こうした「定期購入」を巡るトラブルの相談が、消費生活センターなどに多く寄せられている。消費者庁の検討会は、こうした手口を「詐欺的な定期購入商法」と位置付け、特定商取引法(特商法)の改正を通じて規制強化する方針などを示した報告書を8月に策定。消費者問題に詳しい高木篤夫弁護士は、具体的な対応策として、「インターネット通販の事業者に対する広告の保存・開示の義務づけ」や「通販に対する中途解約権の創設」などをあげる。「詐欺的な定期購入商法」による手口の実態と、被害撲滅に向けた課題を高木弁護士に聞いた。(インタビュー実施日2020月8月28日)

ガイドラインに従った上で、定期購入だと気づかれにくい表示方法が多い

ーー「詐欺的な定期購入商法」とはどのような手口で、どのような被害が発生しているか


たとえば、化粧品などの商品がSNSなどで、「初回お試し価格」として安く購入できると宣伝されていたが、その商品を実際に購入すると、「実は定期購入契約だった」という手口が多いです。

初回は数百円など、安い価格で購入できますが、2回目以降は通常価格として数千円から1万円超などの高い金額を請求されます。しかも、「通常価格で数回購入しなければならない」といった回数縛りの条件が設定されていることも少なくありません。

安い価格で商品を試せると思って購入したのに、最終的に数万円を請求されるという被害が発生しています。

化粧品や健康食品などを「初回お試し価格」で販売し、お試し後に事業者が購入者に連絡して「定期購入しませんか?」と勧誘する方法は、通常の商売としてこれまでも行われてきました。

これに対し、「詐欺的な定期購入商法」として問題視されているのは、「初回お試し価格」をSNS上の広告などで強くアピールし、「購入すると自動的に定期購入契約になる」という注意書きを小さな文字で書くなど、購入者が定期購入と気づきにくいように契約させるものです。

「詐欺的な定期購入商法」による被害の相談は、インターネット通販による事例で多く寄せられています。インターネットの普及により、インターネット通販が身近になったことが背景にあるのでしょう。

また、パソコンよりもスマートフォンでインターネットに接続する人が増えています。スマートフォンの小さな画面だと、広告などに大きく表示された「初回お試し価格」ばかりに目が行ってしまい、注意書きに小さく「定期購入になる」と書かれていたり、スクロールしてはじめて注意書きで定期購入の条件が出てきたりするなど、記載があっても見落としてしまうのだと思います。

特に若い方は契約に関する十分な知識がないことも多く、「初回は安く購入できる」という謳い文句につられてしまうのかもしれません。

ーー「定期購入になる」という注意書きを小さく表示するのは法的に問題ないのか


業者が、インターネットでの購入の申込みなどに対して、購入者が申込み内容の確認や訂正が簡単にできるようにしていない場合は、「顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為」にあたるとして、行政処分の対象となります。

申込み内容の確認や訂正が簡単にできるかどうかの基準として、購入画面の表示例などを掲載した消費者庁の「インターネット通販における『意に反して契約の申込みをさせようとする行為』に係るガイドライン」があります。

ガイドラインでは、購入者が実際に支払う総額を表示することや、購入すると定期購入になると明示することなどを指示していますが、「詐欺的な定期商法」による被害を防ぐためには不十分な内容だと思います。

「総額や定期購入になることが書かれていればいい」ともとれるルールになっているため、「詐欺的な定期商法」を行なっている業者は、ガイドラインに従っていても購入者が定期購入になると気づきにくい表示方法をしているケースが多いのです。

ーー被害者に対する救済はできているか


被害額が数万円にとどまるケースが多く、弁護士に依頼するよりも、請求された額を支払った方が安いという場合も少なくありません。

弁護士が被害者から相談を受けても、被害者の費用負担を考えると「消費者センターに相談してください」といったアドバイスをすることも多いでしょう。

消費者センターに相談しても、取消を認められたり、「通常価格を1回分支払えばいい」というケースもあれば、条件となっている回数分を支払わなければならない場合もあるなど、被害者が救済されるかどうかは、相手との交渉の結果によりさまざまというのが現状です。

消費者側としては法的には錯誤による取消しなどを主張できますが、相手が強硬な態度に出てきた場合は裁判で争うことにならざるをえません。裁判費用と被害額を比べると、裁判は現実的ではないといえます。

「解約の電話をしても誰も出ない」という手口も

ーー「購入者が定期購入だと気づきにくい表示をする」以外にも詐欺的な手口はあるか


定期購入の解約をしにくくしたり、妨げたりするというケースが増えているようです。

たとえば、インターネットで定期購入の申込みができるのに、解約するには平日の日中に電話しなければならない上に、電話をかけてもなかなかつながらないなど、業者が解約手続きを事実上妨害するケースがあります。

「解約手続きは次の商品発送日の●●日前から●●日前まで」など、解約できる期間に不当に制限を設けていたり、「本人確認のため」という理由で住民票や運転免許証の提示を求めたりするなど、業者が意図的に解約しにくくしている事例もあります。

ーー解約を妨げているような手口への規制はあるか


エステや語学教室など、特商法で定められた「特定継続的役務提供」では、中途解約権が認められていますが、インターネットを含む通信販売ではクーリングオフはありませんし、解約に関する規制は返品特約に関するものしかないのが現状です。

たとえば、カリフォルニア州には、インターネットで申し込んだ契約は、インターネットで解約できるようにしなければならないという州法があります。

このようなルールも参考にして、定期購入の申込みはインターネットでできるのに、解約は電話でなければできない状況を規制することも重要だと思います。

「インターネット通販」に対応した規制も必要

ーー消費者庁の検討委員会が報告書で示した「『詐欺的な定期購入商法』への対応」をどのように評価しているか


報告書には特商法を改正し、「顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為」への規制を強化するなどの方針が示されましたが、法改正を行うのは妥当な考え方だと思います。このような詐欺的な定期購入商法は、まともな通販業者にとっても迷惑な商法といえます。

具体的な対応策はこれから法律案を検討されることになりますので、実効性のある施策を作っていただきたいです。

ーー「詐欺的な定期購入商法」による被害をなくすために、具体的にどのような対応が必要か


まずは、ガイドラインをより実効性のある内容にしなければなりません。

今後の法改正は施行までに1年以上かかると思われますが、ガイドラインの見直しならすぐに取り掛かることができるはずなので、現行法下で直近の課題として速やかに対応してほしいと思います。

また、現在の特商法は、当初テレビやラジオ、カタログによる通販などを想定していたのですが、インターネット通販は異なる特性があると思います。法改正を通じ、インターネット通販を対象にした新たなカテゴリを設け、様々な規制を作ってもよいのではないでしょうか。

たとえば、インターネットで定期購入商法を行う事業者に対して、広告の保存と開示を義務付けることが必要でしょう。

新聞やカタログでの通販だと、広告媒体が残っていればあとから内容を確認ができますが、インターネット通販では、スクリーンショットの保存などをしていないと、広告ページが削除されたり修正されたりすることは容易なので、申し込み当時の内容を確認できなくなることが多いからです。

定期購入の解約手続きを妨げたり、解約しにくくしたりする手口に対しては、新たな制度として通販に対する中途解約権利を設ける、解約の妨害を禁止することが重要だと思います。

これは、詐欺的な定期購入商法への対策という視点だけでなく、通販全般の課題に対応する意味でも必要だと考えています。

通販に関する規制は、守らなかった場合でも、行政処分を受けるだけで、「契約はそのまま」で、民法など他の法律によって解決を試みるということなります。法改正を通じて、通販のカテゴリーでも契約の取消しや解約ができる民事上のルールを作らなければならないでしょう。

高木篤夫弁護士プロフィール

1987年大阪大学法学部卒業後、1999年司法試験合格。2001年東京弁護士会に登録、同年ひかり総合法律事務所に入所。消費者問題の専門家として、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会や東京弁護士会消費者問題特別委員会、リース・クレジット被害対策弁護団のほか、日本消費者学会などに所属している。

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