裁判所の冷房停止、この夏相次ぐ 裁判日程への影響も
【本記事は2020年9月9日に公開したものです】この夏、裁判所の冷房設備の長期間停止や故障が相次いで発生した。7月には福岡地裁飯塚支部などが入る庁舎で冷房設備が故障し、現在も不安定な状況が続いている。8月には、奈良地裁で冷房設備の冷却塔の水質検査でレジオネラ属菌が検出され、10日間程度運転を停止したほか、鳥取地裁でも冷房設備が故障し、復旧までに3週間近くを要した。新型コロナウイルスの感染防止のため、マスクの着用が求められるなど、例年以上の熱中症対策が必要な中での冷房設備の停止に、裁判日程の延期などの影響が出ている。
鳥取地裁では、8月6日に冷却塔の部品が破損したため、25日までの3週間近くにわたり、冷房が使えない状態が続いた。地裁は、冷房の故障を受けて、法廷などの各部屋に置くための扇風機25台とスポットクーラー30台を、他県の裁判所から借りるなどして手配。裁判日程への影響や体調不良者は出ていないという。
冷房停止期間中に2回、鳥取地裁に足を運んだ女性弁護士は、弁護士ドットコムタイムズの電話取材に対し、「裁判所の職員の方が気の毒だった」と、暑さを凌ぐ術もなく職務にあたる職員を気遣った。女性弁護士は、8月19日に、司法修習生の研修の一環として開かれた模擬裁判の講評者として法廷を訪れたが、「法廷にはスポットクーラーなどが設置されていたものの、冷風が届く範囲は限られていた」という。気象庁ホームページによると、この日の鳥取市の最高気温は36.7度。蒸し暑い状態が解消されないため、女性弁護士は、休憩時間に自宅へ戻り、アイスノンと冷やしタオルを持参して臨んだ。「法廷は、スポットクーラーの音で声が聞こえにくかった。裁判官役は法服を脱いでいた」とその日の状況を振り返る。
一方、福岡地裁飯塚支部によると、7月27日に庁舎全体に送風する冷房設備が故障し、独立した空調設備があった一部の部屋を除き、8月21日まで冷房が動かない状態が続いた。こうした状況を受けて、裁判日程が変更された事件もあったという。9月8日の時点では、「稼働している時間があるものの、一時的に冷房が停止することがあり、不安定な状態が続いている」という。安定稼働に向けては「現在調整中」とした。
全国の下級裁判所施設の管理を担う最高裁は、弁護士ドットコムタイムズの取材に対し、「全国の裁判所施設の冷房故障等の件数や推移は把握していない」としながらも、「調査をして、冷房の停止や故障などの件数を把握することを検討している」と回答した。
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