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多様な視点を企業に 社外役員マッチング BUSINESS LAWYERS AWARD 2025 越直美弁護士

多様な視点を企業に 社外役員マッチング BUSINESS LAWYERS AWARD 2025 越直美弁護士

「BUSINESS LAWYERS AWARD 2025」全受賞者インタビュー。ガバナンス改革部門の越直美弁護士(OnBoard株式会社代表取締役CEO ・三浦法律事務所)に聞く。 【受賞理由】 大津市長として行政改革を断行後、弁護士・起業家としてガバナンス改革の最前線に立つ。企業のダイバーシティを「成長戦略」と位置づけ、女性役員のマッチングを行う会社を設立。セミナー開催などを通した役員候補の育成にも取り組んでおり、日本のガバナンスに新たな道を示した。多角的な視点で改革を牽引する存在として活躍が期待される。 【プロフィール】 こし・なおみ 西村あさひ法律事務所などを経て、2012年から2020年まで滋賀県大津市長。待機児童ゼロを達成する。現在はOnBoard株式会社CEOとして女性役員の育成・紹介を行うほか、三浦法律事務所パートナー、ソフトバンク社外取締役なども兼務。法律家、元首長、起業家として多角的に活躍している。

「氷河期」が人生を変えた

大手法律事務所から史上最年少の女性市長(当時)、そしてスタートアップ起業家へ—。社会への強い問題意識を感じさせる経歴だが、意外にも「もともとは社会問題への関心は薄かった」という。


そもそも弁護士になったのも夢や憧れからではなかった。いわゆる就職氷河期世代。女性の先輩・友人が民間就職を諦め、公務員や士業を目指す姿に影響された。「氷河期じゃなかったら弁護士にはなってなかったでしょうね」


仕事内容もよく知らなかったといい、受験には3度失敗。転機になったのは西村あさひ法律事務所でのインターンだった。M&Aなど、企業法務という仕事の存在を知り、「スケールの大きな企業案件にかかわり、日本経済を支えたい」と目標ができた。


次の試験で無事合格。憧れだったM&Aなどの仕事に没頭した。「とても忙しかったですが、希望していた仕事で充実していました」。しかし、社会のことを考える余裕はなかった。


留学で変わった「当たり前」

次の転機は弁護士6年目の米国留学だった。当時は2008年の大統領選の真っ只中。バラク・オバマ候補がロースクールの卒業生だったため、学内は異様な熱気に包まれていたという。年下の学生たちが「Change」のプラカードを掲げて奔走する姿に感化された。


さらに衝撃だったのが、修了後に出向した現地法律事務所での光景だ。男性弁護士が育休を取り、女性もキャリアを継続している。一方、日本では第1子出産で6割ほどの女性が仕事を辞めていた。


「もし時間に余裕があっても、日本にいたままだったら疑問を持てなかった。環境を変えたから、『当たり前じゃないんだ』と思えたし、『実は変えられるんだ』と思えるようになったんです」


異文化を知ったことで、学生時代に経験した就職の男女格差や、祖母の介護で仕事を辞めた母の姿など、違和感を覚えつつ「当たり前」と思ってきたものが、改善可能な「社会問題」に変わった。日本の女性が置かれた現状を変えたい—。帰国後の2012年、保育園の増設などを公約として、36歳で地元の滋賀県大津市長に当選した。


「私にしかできないこと」を

市長退任後の2021年、OnBoard株式会社を設立。主に女性の社外役員の紹介・育成などに注力する。

「市長としては2期で保育園などを54箇所つくるなど、女性が働くための『社会基盤』を整備しました。ただ、働き続けられても男女で会社内の立場が違う。今度は『社内基盤』を整えています」


背景には、市長時代に痛感した「同質性の危うさ」がある。就任直後に直面したいじめ自殺への対応では、教育委員会が「教育的配慮」という内向きの論理で再調査に抵抗。保育園の新設では、予算を削られる他部門の職員から感情的な反発を受けることもあった。「ずっと同じ組織にいると、『当たり前』を変えたくない気持ちが強くなるんですよね」


外部の視点がない組織は世間の感覚とズレていく。これは日本企業の取締役会にも通じる。そこに社外役員という形で多様な視点を取り入れるのは企業変革、イノベーションに不可欠だという。


2020年12月、松澤香弁護士と女性役員についてのセミナーを開催したところ、約200人が集まった。手応えを感じ、年明け後2人でOnBoardを起業。現在は企業出身者のほか、弁護士や会計士など、女性を中心に約2200人の役員候補を抱える。セミナーを通し、その育成や交流も図る。


内閣府男女共同参画局によると、2022年時点の東証プライム市場上場企業の女性役員比率は11.4%。2025年には17.7%に増えた。政府は2030年までに30%以上の達成を目指す。OnBoardには企業からのマッチング依頼だけでなく、候補者の登録やセミナー受講も増えているという。


最近ではAI活用にも取り組む。2025年12月には上場企業の女性役員について、有価証券報告書をもとに検索できるAI検索サービスを始めた。AIの性能を身をもって知るだけに、弁護士を取り巻く環境の激変も予感する。


「市長選への出馬を迷っていたとき、友人が『自分にしかできないことをやるべき』と背中を押してくれました。当時は、若いことや行政経験がないことをマイナスに感じていましたが、だからこそできることがあると思いました。改めて『私にしかできないこと』を大事にしなければと感じています」


弁護士、政治家、起業家—。論理、感情、数字と3つの世界を知る稀有な人物としてますます存在感が高まりそうだ。 

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