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理系出身、テック×法律で新たな政策をつくる BUSINESS LAWYERS AWARD 2025 落合孝文弁護士

理系出身、テック×法律で新たな政策をつくる BUSINESS LAWYERS AWARD 2025 落合孝文弁護士

「BUSINESS LAWYERS AWARD 2025」全受賞者インタビュー。スタートアップ支援部門の落合孝文弁護士(渥美坂井法律事務所・外国法共同事業)に聞く。 【受賞理由】 スタートアップが活躍しやすい社会の実現を目指し、ルール形成の最前線で活動している。内閣府の規制改革推進会議ではWG座長として規制改革を主導するとともに、自身が所長を務めるプロトタイプ政策研究所を拠点に、官民の橋渡し役を担い政策提言を継続的に実施しており、国の制度設計から起業家への直接支援まで、エコシステム全体の発展に貢献する功績は大きい。 【プロフィール】 おちあい・たかふみ 慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、同大学院理工学研究科在学中に司法試験合格。2006年に弁護士登録。内閣府の規制改革推進会議スタートアップ・イノベーション促進WG座長、同GXサステナビリティSWG座長として規制改革を主導。自身が主宰するプロトタイプ政策研究所で政策提言に注力。

学生時代に出会った起業家たち

「昨日、高市首相に会ってきたんですよ。激励されましたね」。落合孝文氏は2025年12月の取材でこう語っていた。規制改革推進会議のスタートアップ・ イノベーション促進WGの座長をつとめるなど、政府の会議に多数参加し、政策形成に関わり続けている。この政策形成とスタートアップ支援が結びついているのが、落合氏の特徴だ。


スタートアップとの出会いは、学生時代にさかのぼる。理工系の学部・大学院で学び、司法試験の合格後に起業サークルに関わる機会があり、理系の起業家たちがいた。味覚センサーを開発するなど「味博士」として知られる実業家・鈴木隆一氏も大学の後輩で、交流があった。

落合氏は高校生時代、文系学部への進学も視野に入れており、もともと文系学問への関心があった。大学卒業後の進路としては、会計士試験なども検討した末に、最終的に司法試験を受けた。「私自身は弁護士の道を選びましたが、その後のアグレッシブな起業家たちとの出会いが、今につながっています」と振り返る。


スタートアップ支援に本格的に関わるようになったのは、弁護士になってから「味博士」鈴木氏と再会した2015年ごろ。オンライン診療の制度論議やビジネスがあることを知り、医療のデジタル化に興味を持ったからだ。医師免許を持つ起業家たちとの交流が増えた。


同じ時期にITで金融サービスを進化させる「フィンテック」にも関わるようになり、2015年に設立された一般社団法人Fintech協会の事務局を担当することになった(現在は代表理事副会長)。「大企業中心の団体だと、既に有名な弁護士が参画しているのですが、スタートアップが多い団体なので、私自身にもチャンスがありました」と語る。

医療や金融で成果を積み重ねる

Fintech協会では規制改革の提言に取り組み、20項目を超える提案事項のうち、多くを法改正につなげた。印象に残っているのは、銀行の口座情報や振込機能などを外部事業者のアプリやシステムと連携させるための「銀行API」の法整備に関わったことだ。


この仕組みがあることで、freeeやマネーフォワードといったIT企業のサービスと、金融機関のシステムを連携させ、サービスをより使いやすいものにできる。落合氏は、銀行APIの自主規制団体も作り、金融機関と締結する契約や、要求されるチェックリストの標準化に関わり、スタートアップが金融機関と連携しやすい環境を整えた。


医療分野でも、一般社団法人日本医療ベンチャー協会に参画し、オンライン診療をめぐる厚生労働省の検討会にも参加した。コロナ禍をきっかけに議論が進み、当時は専門委員として傍聴をしていた規制改革推進会議のタスクフォースと厚労省検討会が交錯し、厚労省検討会では業界の代表者らとの激しい意見のやりとりを繰り広げた。落合氏は「賛成・反対という単純な話ではなく、医師側からも電話診療などの提案があって、コロナ特例ができました」と振り返る。


政府の会議や、外部団体などでの活動を通じて、様々な人脈ができた。そこで、所属事務所の中に、自身が主宰する形で2022年、「プロトタイプ政策研究所」を立ち上げ、第一線の有識者や弁護士たちとともに、政策提言を続けている。「業界団体は利害関係があって、中立的な立場をとるのが難しい面があります。法律事務所という立場だからこそ、特定の業界や企業に偏らず、自由に提言できるのが特徴です」と意義を語る。

行き着く先は人材育成

今後の課題として考えているのは、日本のスタートアップ企業が国内マーケット中心で、グローバル展開が不十分なことだ。グローバル展開に向けて企業価値を高めるためには、資金調達が重要で、非上場株式を流通しやすくすることや、IPO(新規株式公開)だけでなく、M&Aを通じたイグジットの環境を作ることも大事だと考えている。そのための政策提言に取り組んでいる。


また、社会課題を解決するために、ライドシェアをめぐる規制改革や、ドローンのさらなる活用、自動運転のための法整備、若年層が安心して資産形成にアクセスできるような仕組みなど、やるべきことは山積しているという。


共通した課題だと考えているのは組織の意思決定と、組織を構成する人材の育成だ。「個別の課題解決だけでは限界があり、結局は人材や組織の問題に行き着きます。一部の優秀な層だけでなく、普通に働く人たちが自発的に変わり、働き方や雇用慣行が変わっていくことで、社会全体に大きなインパクトが生まれます」と強調する。スタートアップや法務人材に限らず、人材育成全般に向けた提言や、地方でのイベント登壇などを通じて、日本社会が抱える根本問題にも正面から挑む。

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