「企業との関係構築、 会議だけでは築けない」 社外取の極意
企業は社外役員を選ぶにあたり、経験者を重視するという。複数の企業から依頼が来る「売れっ子」はどのような経緯で社外役員になり、どのような活動を心がけてきたのか。「SUIT SELECT」や「DIFFERENCE」を展開する株式会社コナカの社外取締役をはじめ、多くの社外役員を経験している大門あゆみ弁護士に聞いた。(取材・文:園田昌也) (弁護士ドットコムタイムズVol.77<2025年12月発行>より)
社外役員登用、傾向に変化
―普段の業務内容を教えてください
女性弁護士3人が所属する事務所で、企業法務分野を中心として取り扱っています。個人事業主の方から上場企業まで幅広い顧客層に対応しています。最近は女性が働きやすい環境づくりの一環で、女性弁護士に窓口の依頼をしたいとのニーズもあり、内部通報の外部窓口業務の依頼も増えています。また、離婚や相続などの一般民事の案件も取り扱っています。
―社外役員への関心はいつからですか
初めて社外役員になったのはコロナ前です。まだ経験者の弁護士も多くなく、このような仕事の打診が私にあるとは思いませんでした。興味のある業種だったので社外監査役を引き受けました。会計を独学したり、常勤監査役の方にアドバイスをいただいたり、監査法人、証券会社等とのかかわりからも多くを学びました。
―どういう経緯で声がかかったんですか
会社側に顔見知りがいたのです。きちんと意思疎通ができるかは社外役員を選ぶ際に重要なので、面識があるという安心感があったのでしょう。
当時と比べて今は弁護士の経験者も増えましたし、選任に際しての公正さという視点もガバナンス上、より重視されるようになったため、こうした経緯での就任は減っているように感じます。会社側が、とある分野で著名な弁護士に就任して欲しい等のケースは別ですが、上場会社では特に、ガバナンスの観点から複数の候補者から面接して決めることが多いと思います。
―社外役員の仕事内容を教えてください
「事前共有される資料を読んで取締役会に出る」のは共通ですが、会社のステージや業種によって検討課題が変わります。
たとえば、上場準備中のスタートアップなら、上場後に耐えられる管理部門の体制整備などです。既に上場していれば、上場審査を通過しているので、管理部門の体制は基本的にはできており、経営状況の改善等、別の経営課題がテーマになります。実際に株式が公開され、一般株主がいるのでまた違った緊張感もあります。
また、企業によっては取締役会で決議するに足りる資料が十分でないこともあります。しかし、取締役会で気づくようでは遅いのです。そのため、事前に企業に主体的に働きかけて不足する資料や情報の提供をお願いすることもあります。
―ビジネス知識が必要そうですね
もちろん一定の知識は必要です。他方で、私の知人には一般民事をメインで扱いながらプライム上場企業の社外役員をしている弁護士もいます。会社の事業と普段扱っている分野が近く、弁護士業務が役立っているそうです。
私も含めて弁護士は、会計やマーケティング、営業等の知識に必ずしも精通している方ばかりではないと思います。基本的な知識を身に着ける姿勢は大切ですし、分からないことを何でもかんでも質問するべきではないですが、素朴に論理的なつながりが分からないことを質問することに価値がある場面もあるように思います。このとき、弁護士の強みである論理的思考力を活かすことができると考えています。
主体的に動き、企業価値向上へ
―質問などの行動も重要なんですね
社外役員の価値は、自分がいることで企業価値が向上するかどうかで決まると考えています。企業価値を向上させるために、当然ですが、取締役会の出席やその場での質問以外に何をする必要があるのか、自分で考えて動く必要があります。
日頃から経営課題について事業部や経営層にヒアリングしたり、ガバナンス強化のための提言をするなど、積極的な情報取得やコミュニケーションを意識し、経営判断と監督の土台作りを心掛けています。
また、社外役員には、いざというときのブレーキ役も期待されており、大勢の意見とは異なる意見を表明すべきときもあります。月1〜2回の会議の出席のみでは「社内をよく知りもしないのに」と思われてしまうかもしれません。だからこそ、この社外役員の発言は、会社のことを考えてのもので、聞く価値があると思ってもらえるような関係性作りが大切であり、このようなコミュニケーションは、社内の方々との関係構築にも寄与していると感じます。
―どこに面白さや難しさがありますか
常に善管注意義務と隣り合わせという責任の重さはあります。そのため、社外役員向けに研修を提供する複数の団体に所属し、情報のアップデートを心掛けています。
また、重要な議題や経営課題があるときは、社外役員の仕事に週のほとんどの時間を使うこともあります。臨時取締役会などが招集され、急ぎ検討して決議しなければならないこともあるので、時間を流動的に使えないと難しいですね。
一方で、事業会社で働いたことがないので、社内の一員として、社員やほかの役員の方と交流を行うことは新鮮ですし、顧問弁護士としてのかかわりと違って、企業の意思決定や監督に直接寄与する経験に、やりがいを感じています。
弁護士として培ってきた知見を活かしつつ、事業会社での経験も積ませていただける社外役員の仕事は、私のキャリアに新しい広がりと深みをもたらしてくれていると実感しています。
大門あゆみ(だいもん・あゆみ)弁護士
法律事務所UNSEEN 代表弁護士、第二東京弁護士会(64期)。現任では株式会社コナカ(スタンダード:7494)、シリコンスタジオ株式会社(スタンダード:3907)で社外取締役を務める。