著名弁護士の本棚〜実務で使うおすすめ書籍5選〜 【ビジネス・教養】岡芹健夫弁護士
各分野の著名弁護士にインタビューし、若手や初学者向けの「おすすめ書籍=推し本5冊」を選んでもらいました。(弁護士ドットコムタイムズVol.67<2023年6月発行>より)
著名弁護士に共通する「準備力」
使用者側での労働問題に詳しい岡芹健夫氏に、弁護士のビジネスに役立つ書籍を聞いた。
『弁護士の経営戦略』は、営業の観点から顧客との信頼関係をどう構築するかなどを具体的に記したもの。「お客さんを獲得しないと弁護士として食べていけない。独立・経営弁護士のみならず、それをめざす若手にとっても基本的な思考やテクニックを身に着けるのに役立ちます」。
著者の故・髙井伸夫弁護士は、岡芹氏の師でもある。準備に時間をかけるといい、「証人尋問が近づくと、ほぼ徹夜して一緒に想定問答を練ったものです」。
準備の徹底は著名弁護士の共通点のようだ。『志は高く 目線は低く』は、総会屋対策などで知られる久保利英明弁護士が、司法試験合格後に旅したアフリカ大陸などの放浪記だ。冒険譚としても楽しめるが、「当時は1960 年代。臨機応変な機知だけでなく、そもそも周到な準備がないと無事には帰って来られない。チャレンジ精神と機知と準備のすごさに驚きます」。
顧客への理解度で差をつけ
岡芹氏は「企業法務を扱うビジネスロイヤーには、法律書や裁判例の知識と同じくらい、顧客に対する深い理解が必要」と強調する。常日頃から日経新聞やビジネス雑誌などを読んで、経済や社会の流れにアンテナを張っておくべきだという。
コミュニケーションをとるうえでは、人や組織に対する理解も大切だ。「歴史や文学からは、『人は得てしてこういう行動をとる』ということも見えてきます」。お気に入りとして、顧客にもファンが多そうな『三国志』、組織論の名著『失敗の本質』を推す。
専門の人事労務では、実務初心者を対象とした自著『労働法実務 使用者側の実践知』を挙げた。
【岡芹弁護士の5冊&ひとこと】
- 『弁護士の経営戦略』髙井伸夫・著 民事法研究会/発行・2017年5月 1,870円(税込)弁護士の営業術具体的な秘訣を公開
- 『志は高く 目線は低く』久保利英明・著 財界研究所/発行・2016年2月 1,650円(税込)1960年代のアフリカへ著名弁護士、若き日の放浪記
- 『新装版 三国志 全五巻』吉川英治・著 講談社/発行・2008年10月 1,100~1,210円(税込)コアなファンも多い有名中国古典
- 『失敗の本質日本軍の組織論的研究』戸部良一/寺本義也/鎌田伸一/杉之尾孝生/村井友秀/野中郁次郎・著 中央公論新社/発行・1991年8月 838円(税込)日本軍はなぜ負けた徹底分析した組織論の名著
- 『労働法実務使用者側の実践知〔第2版〕』岡芹健夫・著 有斐閣/発行・2022年8月 4,290円(税込)労働法実務初心者の最初の道しるべに最適
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岡芹健夫弁護士
弁護士法人髙井・岡芹法律事務所。第一東京弁護士会。46期。