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「地毛が茶髪」の女子生徒に「髪を黒く染めろ」そう指示されたら慰謝料を請求できる?
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「地毛が茶髪」の女子生徒に「髪を黒く染めろ」そう指示されたら慰謝料を請求できる?

地毛なのに「髪を黒く染めろ」と上司から命令されて精神的苦痛を受けたとして、兵庫県内のスーパーでアルバイトをしていた女子高生が、スーパーに慰謝料など60万円の損害賠償を求める裁判を起こした。神戸地裁姫路支部は3月下旬、「生来の身体的特徴を否定するのは極めて不適切」などとして、スーパーに慰謝料など33万円の支払いを命じた。

報道によると、この女子高生は、レジ打ちや食品の陳列を担当していたが、副店長から「頭が少し茶色いから、染めるか辞めるかの二者択一で決めてほしい」と言われていた。判決では、こうした発言が「髪を染めるか退職かを選択させる理不尽なもの」と指摘され、「原告の精神的苦痛は甚大だった」と認めた。

ネット上では、地毛が茶髪やパーマのように見える髪質の少女が、学校の先生に「髪を黒く染めなさい」「縮毛矯正しなさい」「このままでは行事に出席させられない」と言われたという相談もみかけられる。そのような場合、学校を相手取って、慰謝料を請求することはできるのだろうか。日弁連子どもの権利委員会に所属し、子どもや学校の問題にくわしい宮島繁成弁護士に話を聞いた。

●「毛染め禁止」の校則は有効?

「何の根拠もなく、学校が『髪の毛が茶色い』『染めるか辞めるか二者択一』などと言えば、この裁判と同じく、慰謝料の支払いを命じられることになるでしょう」

宮島弁護士はそう指摘する。

校則で「茶髪・パーマは禁止」と定めている学校は少なくないようだが、髪の色や型に自由を認めない校則そのものに問題はないのだろうか?

「頭髪について校則で定めている場合は、校則の合法性との関わりから問題になります。頭髪一般は『憲法の人格権』の問題として論じられており、これが争点となった有名な裁判があります。

1985年(昭和60年)の熊本地方裁判所の判決は、公立中学校の男子生徒の丸刈りを定める校則を合憲と判断して、生徒側の慰謝料請求を斥けました。また、1996年(平成8年)の最高裁判所の判決は、私立高校のパーマ等を禁止する校則に違反した生徒に対する『自主退学勧告』は違法ではないとして、学校に対する慰謝料請求を棄却しました。

この二つの裁判に対しては学説の批判も多いのですが、とりあえずこれを前提とするなら、毛染めを禁じる校則は有効と判断される可能性は高いと思われます」

●もともと茶色の髪だったら?

では、天然の色が茶色だったり、パーマのようにみえる癖がついている生徒であっても、校則にあわせて「黒髪・ストレート」に治す必要があるのだろうか。

「毛染めを禁じることと、髪の毛が黒色であることは別なので、もともとの茶色を黒色に変更させることは、生徒の人格権を侵害するという理由で違法となり、慰謝料支払いの対象になる可能性は高いと思います。毛染め・パーマを禁じながら、生徒に毛染め・パーマを命じるのは一貫性がないようにみえます」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

宮島 繁成
宮島 繁成(みやじま しげなり)弁護士 ひまわり総合法律事務所
日弁連子どもの権利委員会、教育法制改正問題対策ワーキンググループ。いじめや体罰のほか、スポーツ問題に取り組んでいる。中学校と高校の教員免許を有している。

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