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「将来はロボット愛護法ができる」 弁護士が予想する「ロボット社会」の新ルール
ソフトバンクが今年発売するロボット「Pepper」

「将来はロボット愛護法ができる」 弁護士が予想する「ロボット社会」の新ルール

世界一のロボット活用社会を目指す――。政府は1月下旬、国内のロボット産業を振興するため、「ロボット新戦略」を取りまとめた。少子高齢化や生産年齢人口の減少が進むなか、ロボットを活用することによって、経済成長につなげることがねらいだ。

ロボットのテクノロジーは、製造業だけでなく、医療・介護、インフラなど、幅広い分野で人手不足を解消したり、過重な労働から労働者を解放したりすることで、社会の課題を解決することが期待されている。

新戦略では、日本が「ロボット技術革新」の拠点となることを目指し、ロボットに関係するルールの整備を盛り込んでいる。ロボット活用に向けて、今後どのような法整備が必要になるのだろうか。ロボットをめぐる法律にくわしい小林正啓弁護士に聞いた。

●「ドローンを利用するために、道路交通法の改正が必要」

「ロボットの法整備に関しては、おおまかに分類すると、『大改正が必要なもの』と『ゼロからつくるもの』があります」

小林弁護士はこう切り出した。「大改正が必要なもの」とは、どんな法律だろうか。

「代表的な例をあげると、道路交通法です。

ロボットは自動で動き、空を飛ぶことも想定されますので、グーグルなどが開発を進めている『自動運転車』や、空を飛ぶ『ドローン』(無人飛行機)の法整備を例に考えてみましょう。

『自動運転車』が公道を走行できるようにするためには、道路交通法の改正が必要になります。

また、私が知る限り誰も指摘していませんが、ドローンを商用利用するためにも、道路交通法の改正が必要になると考えられます」

●「航空法の改正は本質的な問題ではない」

ドローンは空を飛んで、物資を輸送するなどの活用が期待されている。道路よりも、空域を利用するための法整備が必要なのではないか。

「ドローンに関しては、一般的に、航空法の改正が必要になると言われていますが、犯罪やいたずら、不慮の事故を防ぐための改正が必要なだけです。

少なくとも、マルチコプターのような小型ドローンは、もともと地上数十メートル程度の低い空域を飛ぶことを想定していますから、航空法を改正しなくても、有人航空機との空域のすみ分けができています。航空法の改正は、本質的な問題ではありません。

むしろ、ドローンが宅配便に使われるとき、私有地の上空を飛行すると、民法の『土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ』という規定に違反します(民法207条)」

では、道路交通法の改正で、何を可能にすべきなのだろうか。

「さまざまな高さの建造物が存在し、他のドローンも飛行するなかで、どうやって安全かつ確実に飛行させるかという問題があります。

そこで、公道の上空をドローン用に開放し、電波による空路を設定して、その空路上を飛行させることが必要になるのです。

また、商用ドローンには、空路を正確にトレースする装置や、衝突防止装置の設置を義務づけるべきでしょう」

●「ロボットの破壊は社会的なショックが大きい」

一方で、「ゼロからつくるもの」としては、どんな法律が考えられるのか。

「私は『ロボット愛護法』ができると予想しています。人型ロボットや動物型ロボットの廃棄や破壊を規制するもので、現行法の『動物愛護法』に似た法律です」

どうして、そんな法律が必要になるのか。

「たとえば、人型ロボットや動物型ロボットを粗大ゴミとして路上に捨てたり、切り刻んで破壊するような映像を動画サイトにアップロードしても、現行法上では違法になりません。

しかしそのような行為は、社会的なショックが大きいでしょう。そこで、ロボットに人権を認めるというよりも、社会的法益を守ることを目的として、ロボット愛護法が求められるのです」

小林弁護士はこのように説明していた。犬や猫のような動物と同じように、ロボットが人間と寄り添う時代が、すぐそこにやって来ようとしているのかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

小林 正啓
小林 正啓(こばやし まさひろ)弁護士 花水木法律事務所
1992年弁護士登録。ヒューマノイドロボットの安全性の問題と、ネットワークロボットや防犯カメラ・監視カメラとプライバシー権との調整問題に取り組む。

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