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生活保護「不正受給」は1%未満にすぎない――日弁連が利用を促すパンフレット作成
日弁連が作成した生活保護のパンフレット

生活保護「不正受給」は1%未満にすぎない――日弁連が利用を促すパンフレット作成

「不正受給が横行しているのではないか」「利用者が増えると国が大変」——そんな「生活保護制度」へのネガティブなイメージを変え、利用を促すため、日本弁護士連合会(日弁連)がパンフレットを作成し、ネットで公開した。

「あなたも使える生活保護」と題した計8ページのパンフレットには、利用できる人の条件や申請の手順などが、イラストとともに分かりやすく説明されている。また、役所の窓口で申請を断られたときに相談できるNPO法人などの連絡先も、掲載されている。

パンフレットでは、受給資格がある低所得世帯のうち、約2割の世帯しか生活保護を利用していないことが紹介されている。一方、不正受給の比率は、2012年度で0.53%(厚労省調べ)にとどまっており、「全体の1%にも満たない」と説明している。

生活保護の問題にどう向き合えばいいのか。日弁連の貧困問題対策本部で事務局次長をつとめる小久保哲郎弁護士に話を聞いた。

●「芸能人バッシングで偏見が助長された」

「生活保護の利用が少ない理由は、3つあります。1つ目の理由は、自分が生活保護を使えることを知らないためです。持ち家があるから使えない、年が若いから使えないと思い込んでいる人もいますが、実際は、そのような人にも受給資格があります」

小久保弁護士はこのように語る。

「2つ目の理由は、生活保護にネガティブなイメージがあり、『恥ずかしいから使いたくない』と申請をためらうためです。

2012年4月、ある芸能人の母親が生活保護を利用していることが、実際は不正受給ではないのに不正受給であるとして過剰なバッシングを浴びましたが、実は2011年に、生活保護の受給者が過去最多になりました。あのバッシングは、生活保護の受給者を減らすために政治家や行政が意図的に行った、ネガティブキャンペーンだったと言えるでしょう。

不正受給がテレビなどでさかんに取り上げられた結果、生活保護利用者に対する偏見が助長されました。しかし実際は、不正受給額は全体の0.53%と非常にわずかです」

2012年度の生活保護の不正受給は全国で4万件を超え、メディアでは「過去最悪」と報じられたが、それでも割合は1%にも満たないということだ。パンフレットには「むしろ使うべき状況にある多くの人が受給から漏れている」と書かれている。

「3つ目の理由は、せっかく申請しようと思っても、役所で追い返されるためです。役所の職員の中には、社会福祉に対する専門性も熱意もない人が少なからずいます。

たとえば、生活保護は本来、ホームレス状態の人でも受給資格があります。しかし先輩から聞きかじった知識しかない職員がいる役所では、『うちではホームレスの人の申請を通したことがないから』というだけの理由で、申請しようと思ってきた人を追い返してしまう。法律や厚労省の通達に基づかない、役所ごとの『ローカルルール』に沿った運用が横行しています」

●「使うことが『恥ずかしい』制度ではない」

では、今回のパンフレットを通じて、どう改善したいのだろうか。

「今回のパンフレットを読んでもらうことで、『自分も生活保護を使えるんだ』ということをまず知ってほしい。そして、不正受給はごく例外的なケースで、恥ずかしい制度ではないと認識を改めてほしいです。

役所の窓口で追い返されたら、支援団体や弁護士に相談してほしいですね。NPOの支援者や弁護士と一緒に申請に行けば、追い返される可能性はかなり低くなります」

どのタイミングで利用するのがいいのだろうか。

「生活が極限まで苦しくなり、心の病気になるようなところまで追いつめられないと、生活保護を使おうと思えない人が多いです。ただ、病気になってしまってからだと医療費もかかり、生活を立て直すことが難しい。

もっと早く生活保護を使えば、早いうちに再スタートが切れます。ぜひ、追いつめられる前に申請してほしいです」

小久保弁護士はこのように語っていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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