「どうして解散するんですか?」——「小学4年生の中村」を名乗る人物が、衆議院解散に疑問を投げかけるサイトを作ったが、完成度の高さから「小学生が本当に作ったのか」とネット上で話題になった。結局、大学生による「なりすまし」だったことが発覚し、批判を浴びている。
「小学4年生の中村」をかたっていたのは、NPO法人「僕らの一歩が日本を変える」の代表をつとめる慶応大生、青木大和さんだった。青木さんは「皆さんに嘘をつく形となり、本当に申し訳ありませんでした」とネットで謝罪。代表理事を辞任した。ただ、NPO法人の団体としての関与は否定している。
青木さんは「より多くの方を巻き込んだ形で、今回の選挙の意義を語り合うことができるのではないかと考えました」と述べているが、「ネット選挙」が解禁されてから初の衆院選を迎えようとするタイミングだったこともあり、インパクトは大きかった。今回の情報発信の手法に、法的な問題はないのだろうか。秋山直人弁護士に聞いた。
●公選法違反になるのか?
「いわゆる『ネット選挙』の解禁につながった改正公職選挙法では、当選を得る目的・得させる目的・得させない目的をもって、真実に反する氏名、名称、身分を表示してインターネット等を利用する方法により、通信をした場合、氏名等の虚偽表示罪が成立する、とされています(同法235条の5)。
しかし、今回のケースでは、サイトの作成者は、自らが『当選を得る目的』や、第三者に『当選を得させる目的・得させない目的』をもって当該サイトを開設したのではないと思われます。ですから、氏名等の虚偽表示罪は成立しないでしょう」
公選法ではなく、詐欺などの可能性はないのだろうか。
「今回のサイトが何らかの商品・サービスの販売など、営利を目的にしていて、『小学4年生の中村が作成した』という虚偽の事実を告げることで、サイト閲覧者を騙し、営利を得ていたという場合には、詐欺や、景品表示法上の不当表示の問題が生じる可能性があります。
しかし、今回のサイトは、商品・サービスの販売などの『営利』を目的にしたものではないでしょう」
では、法的問題はない、ということになるのか。
「今回のサイトが、衆院解散について政治的な批判・論評をする目的で、非営利目的で開設されたものであるとすれば、表現の自由の保障(憲法21条)ともかかわる問題ですし、『小学4年生の中村』を名乗っていたことについて、社会的な批判はあろうかと思いますが、『違法』ということにはならないのではないか、と思います」
秋山弁護士はこのように締めくくった。「違法」とはいえないにしろ、なりすましの場合は誤った情報を広めることになりかねないので、注意したいところだ。