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「こんな改革案でえん罪がなくせるのか」 えん罪被害者が「刑事司法改革案」を批判
左から、杉山卓男さん、菅家利和さん、桜井昌司さん(司法記者クラブ)

「こんな改革案でえん罪がなくせるのか」 えん罪被害者が「刑事司法改革案」を批判

やってもいないことで犯罪者として扱われる「えん罪」。繰り返されるえん罪事件を防ぐため、国が進めている刑事司法改革に9月18日、当のえん罪被害者たちが「ノー」を突きつけた。

この日は法務省の法制審議会が、法務大臣に「改革案」を答申する日だった。えん罪被害者たちは、このままだとえん罪の温床がそのままになるだけでなく、新たなえん罪を生みかねないとして、答申をやめるよう審議会に要望し、記者会見を開いた。

●「取り調べでウソの自白をさせられた」

「えん罪をなくすという真剣な姿勢が感じられない」。えん罪被害者の一人、桜井昌司さんは厳しい表情で、「改革案」を切り捨てた。

桜井さんは、1967年に茨城県で起きた「布川事件」で殺人犯とされ、無期懲役で服役した。しかしその後、新証拠が見つかったことなどで裁判がやり直され、2011年に無罪となった人物だ。

桜井さんが強調した改革案の問題点は、目玉だったはずの「取り調べの全面可視化」が、全体のわずか2%でしか行われないことだ。

「私たちは、警察の取り調べでウソの自白をさせられた。逮捕された時点で『犯人』として扱われ、罵声を浴びせられた。(同じくえん罪被害者の)菅家さんは蹴られたり、殴られたり、眠らせてもらえなかったりした」

桜井さんは、自分たちえん罪被害者の体験をこう振り返る。取り調べが完全に可視化されない限り、同じように自白を強要される人が、また出てきてしまう――。桜井さんはそう心配しているのだ。

桜井さんは「こんなので本当にえん罪をなくせるのか。私たちが無罪になったことに何も感じていないのだろうかという怒りがある」と力を込めて語った。

●「警察のやり方は今でも絶対に許さない」

同じく会見に出席した菅家利和さんは、ときおり語気を強めながら「警察、検察のやり方を変えてもらいたい」と訴えた。

菅家さんは1990年に栃木県で起きた「足利事件」で、誘拐殺人犯として無期懲役の判決を受け服役。その後、2009年に行われたDNA鑑定によって無実が判明し、裁判のやり直しで無罪となった。

「私は何もやっていないのに、犯人にされた。(警察に)連れて行かれて、殴られて、蹴飛ばされ、無理やり自白させられた。そういう警察のやり方は今でも絶対に許さない。

警察は何をやっても許されるのか。警察こそ犯罪者じゃないのか。自分は無罪になったけども、それで終わりじゃない」

菅家さんはそう怒りをぶつけていた。

桜井さんや菅家さんたちは、今回の案が検察側の証拠を裁判で開示しないとしていることに加え、司法取引の導入や盗聴捜査の拡大などを盛り込んでいることも問題視し、えん罪被害者の声を聞くよう求めている。

しかし、法制審議会はこの日の午後、法務大臣へ改革案を答申した。今後、「刑事司法改革」の議論の場は法務省、内閣などを経て、国会に移ることになりそうだ。

(弁護士ドットコムニュース)

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