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小林幸子さんが「コミケ」でオリジナルCD「手売り」 マネする歌手は出てくるか?
コミックマーケットに参加した小林幸子さん(左・2014年8月17日撮影)

小林幸子さんが「コミケ」でオリジナルCD「手売り」 マネする歌手は出てくるか?

紅白の「ラスボス」がコミケに降臨――。演歌歌手の小林幸子さん(60)が8月中旬、東京ビッグサイトで開かれた国内最大の同人誌即売会「コミックマーケット」(コミケ)に初参加して、大きな話題になった。

報道によると、うだるような暑さの中、小林さんはみずからブースに立ち、人気ボーカロイド曲をカバーしたオリジナルCD「さちさちにしてあげる♪」を販売。1500枚を2時間40分で完売した。ツイッターでは、ファン一人ひとりにCDを手渡しする小林さんの「神対応」が絶賛された。

小林さんの「成功」に続けとばかりに、今後、メジャーレーベルに所属する有名アーティストたちがコミケに参加し、オリジナルCDを手売りする可能性はあるのだろうか。エンターテイメント法務にくわしい高木啓成弁護士に聞いた。

●メジャーレーベルとアーティストとの関係とは?

「メジャーレーベルに所属するアーティストが次のコミケに参加して、オリジナルCDを手売りするという可能性は低いでしょう」

高木弁護士はズバリ予想する。なぜだろうか。

「メジャーレーベルに所属しているアーティストは、レコード会社との間で『専属実演家契約』を結んでいます。この契約は、以下の3点が主な内容です。

(1)契約期間中、アーティストが、レコード会社に専属して、CDなどのレコーディングのための実演(歌唱や演奏)を行うこと

(2)その実演に関する著作権法上の権利をレコード会社に譲渡すること

(3)その代わり、レコード会社はアーティストに対して『アーティスト印税』と呼ばれる対価を支払うこと」

この契約によって、アーティストはレコード会社の「専属」となる。

「ですので、アーティストは契約期間中、そのレコード会社に無断で、他のレコード会社のCDのレコーディングに参加したり、コミケで手売りするためのオリジナルCDのレコーディングをおこなうことはできません。

メジャーレーベルに所属しているアーティストがコミケで手売りするためのオリジナルCDをレコーディングするためには、『専属解放』と呼ばれる、レコード会社の承諾が必要になるのです」

では、レコード会社は専属解放をおこなわないのだろうか。

「アーティストが他のレコード会社のレコーディングに参加することについて、一定の専属解放料を条件にレコード会社が専属解放をおこなう例は見られます。

しかし、オリジナルCDを手売りすることに対しては、レコード会社は慎重な判断をすると思われます」

 ●小林さんは「専属実演家契約」を結ばず、自社レーベルで展開

それでは、小林さんは、なぜコミケに参加してオリジナルCDを手売りすることができたのだろうか。

「実は、小林さんはメジャーレーベルと専属実演家契約を結んでおらず、自社レーベルで活動しています。ですから、オリジナルCDを手売りすることが可能だったのでしょう」

なるほど、今回小林さんがコミケに参加できた背景には、こういった事情があったのか。

「CDの売上が年々減少傾向にあるなか、アーティストは、レコード会社に所属するだけではない、さまざまなプロモーションが求められています。

小林さんのコミケ参加は、今後のアーティストの活動を考えるうえで重要なヒントになるのではないかと思います」

高木弁護士はこのように意義を見いだしていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

高木 啓成
高木 啓成(たかき ひろのり)弁護士 渋谷カケル法律事務所
福岡県出身。2007年弁護士登録(第二東京弁護士会)。映像・音楽制作会社やメディア運営会社、デザイン事務所、芸能事務所などをクライアントとするエンターテイメント法務を扱う。音楽事務所に所属して「週末作曲家」としても活動し、アイドルへ楽曲提供を行っている。HKT48の「Just a moment」で作曲家としてメジャーデビューした。Twitterアカウント @hirock_n

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