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<PC遠隔操作事件>「あなたを見捨てないと伝えた」(佐藤博史弁護士会見詳報・上)
PC遠隔操作事件で主任弁護人をつとめる佐藤博史弁護士

<PC遠隔操作事件>「あなたを見捨てないと伝えた」(佐藤博史弁護士会見詳報・上)

PC遠隔操作事件で、連絡が取れなくなっていた片山祐輔被告人の保釈が取り消され、その身柄が拘束されたことを受けて、主任弁護人をつとめる佐藤博史弁護士が5月20日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた。片山被告人が一連の事件の犯行を認めたことについて、無罪を主張してきた佐藤弁護士は「完全にだまされた」と述べながらも、「否定的な感情はない」と心境を語った。

佐藤弁護士によると、19日午前10時すぎから連絡が取れなくなった片山被告人は、公園で自殺を図ったものの死にきれず、電車で東京の高尾山に行って、チューハイを飲みながら山中をさまよっていた。その後、駅のホーム下の避難スペースから電車に飛び込んで自殺を図ろうとしたが、思いとどまり、同日夜に佐藤弁護士に電話をかけてきたという。翌20日になって佐藤弁護士の事務所に入り、そこで東京地検に身柄を拘束された。

16日に真犯人を名乗るメールを送ったことについて、片山被告人は、母親から「一日も早く前のような平和な生活が送りたい」と言われたことが動機になった、と佐藤弁護士に明かした。しかし、メールを送ったスマートフォンが荒川の河川敷から見つかったとの報道を聞いて、一連の事件の真犯人しか知りえないパスワードを使った事実が発覚すると思い、すべて認めることを決意したという。

記者会見で、佐藤弁護士と報道陣との間にあった主なやりとりは次の通り。

●「自分がサイコパス」と言っていた

――片山被告人はどんな言葉で犯行を認めたのか?

「すいません、私が真犯人です」ということだった。今回の真犯人メールだけでなく、それ以前の事件もやったということだ。

――今日、身柄が拘束された時の片山被告人の様子は?

(行方不明になった)昨日は動揺していたが、今朝会った時に変わった様子はなかった。「昨日はチューハイの缶を飲みっぱなしで山をさまよった」と言っていた。食事も昨夜、寝る前にとったが、今朝はとってないようだった。

――佐藤弁護士の率直な感想は?

片山さんに「申し訳ありません」と言われたが、正直なところ、全く裏切られたような否定的な感情はない。片山さんは「今までの弁護人を解任して、国選弁護人を頼もうと思いました」と言っていたが、私は即座に「あなたを見捨てない」と応じた。私自身は、否認している被疑者が「実はやってました」と告白することに何回か遭遇している。それをもとに弁護するのが弁護士だ。裏切られたと非難するものでもない。意外なほど冷静でいられた。

――事件を起こした動機は?

(16日に送られた)ラストメッセージに警察や検察への恨みを書いているが、最初(の動機)はそういうものではなかったそうだ。16日の会見では、「真犯人はサイコパス」と言っていたが、今日は「自分がそうなんだ」と言っていた。サイコパスは嘘が平気でつけるということだ。意図的ではなく、ごく自然にできている。

――母親は何と言っているか?

今日、(片山被告人が)私の事務所に着いてから、電源を切っていたスマホをあけて、読んでみたところ、その中に母親から、「あなたが真犯人だったとしても受け入れる」ということが書いてあった。(片山被告人は)「母親に合わせる顔がない」と言っていた。

――片山被告人は、涙を見せていたのか?

涙はまったく見せてない。変な感じではなかった。ただ、お母さんに電話していた時にちょっと涙ぐんでいた。

●真犯人メールがなければ、無罪弁論をしただろう

――昨日の会見では、無実は揺るがないといっていたが、正直どう思っているか?

昨日の段階では、「(送られてきたのは)真犯人からのメールで間違いない」と言った。片山さんが送ったものではないということも確信していたので、無実の確信も揺るがなかった。その半分は正しかったが、半分は完全に裏切られた。特別弁護人の指導のもとに、(片山被告人は)市販のPCを買って、アクセスのデータも残していたが、真相としては、別に秘密のPCを持っていた。さらに埋めたスマホをもっていた。完全に私たちを欺いていた。それまでに私たちが知らされていた事実を前提にすれば、無実の主張を続けることができたのだが・・・。

――一連の犯行の動機が分からないが?

わかりやすく説明するのは、彼自身にも難しいのではないか。給料が安かったと言っているが、そんなに極端に仕事に不満があるようにも思えない。母親と一緒にささやかに暮らすのが彼の日常だ。何の不満もないはずなのに、何らかの出来心でやってしまった。

――犯行は一人でやったことなのか?

直接は聞いてない。だけど、間違いなく彼一人だと思う。もし複数人いれば、今回みたいなことを自分でやる必要もない。ほかの人にさせればいいだけだ。

――片山被告人を信じた理由は?

当初、「片山さんが犯人」という徹底的な証拠があるように言われたが、裁判の間も決定的な証拠が示されなかった。悔しまぎれではなく、今回の真犯人メールがなかったら、私は自信をもって無罪弁論をしただろう。刑事弁護の怖さかもしれない。

――スマホからはDNAが出た。なぜそんなものを埋めたのか?

15日に自転車でバス停に向かい、そこからバスに乗り込んだ。一緒に乗り込む人も降りる人もいなかったそうだ。河川敷は見晴らしがいいので、尾行はなかったと思った。ポールが50メートル間隔で立っていて、150メートル先に本を読んでいる男性がいたが、その人は自分が到着する前からいたので、大丈夫だと思って、埋めたと言っている。ただ、下見に2、3回行っているので、そこが(発覚した)真相ではないか。

(弁護士ドットコムニュース)

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