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ペットホテルに預けたままの「犬や猫」は落とし物と同じ? 放っておくとどうなるのか
飼い主側の様々な事情から、捨てられるペットが後を絶たない

ペットホテルに預けたままの「犬や猫」は落とし物と同じ? 放っておくとどうなるのか

ペットを飼っている人にとって、突然の出張や長期の旅行は悩ましいものだろう。わが子のように可愛がっているペットを一緒に連れていけない場合、ペット専用ホテルに預けることもあるかもしれない。

ところが最近、そのペットホテルで、残念な事態が起きているという。飼い主がペットをホテルに預けたまま、約束の期日が過ぎても、引き取りに来ないというケースだ。このような問題が起きないように、飼い主の身分証明書を厳しく確認しているホテルもある。

しかし、なかには、飼い主に連絡がつかないなど、ペットをホテルに捨てたとしか思えないようなケースもあるという。このようなとき、ホテル側は置き去りにされたペットをどう扱えばよいのだろうか。また、こうした事態を防ぐための法的な対策はあるのだろうか。坂野真一弁護士に聞いた。

●ペットは「遺失物」に準ずる扱いとなる

「ペットは法律上、『動産』(民法86条2項)として扱われるので、ペットホテルに放置された犬は、他人が置き去った物と考えられます。よって、原則としては、遺失物法2条1項により、準遺失物として扱われるべきだと考えます」

つまり、法的には「落とし物」と同じようなものだというわけだ。そうだとすれば、ペットをどう扱えばいいのか。

「これまでの遺失物法では、たとえ犬のような生き物であっても、警察を窓口として取り扱われてきました。しかし、生き物は財布などと違い、世話をする必要があります。

そこで2006年に遺失物法が改正され、動物愛護管理法35条3項に規定する『犬または猫』の引きとりを都道府県等(保健所など)に求めた取得者については、拾得物として警察に届ける義務がなくなりました。ただし、犬・猫以外の動物は、今まで通り警察に届けなければなりません」

そうなると、ペットホテルとして、まずすべきことは?

「ペットホテルとしては、飼い主が分かるのであれば、まず飼い主に引き取りを求めるべきです(遺失物法4条1項、13条1項)。

しかし、申込書が偽名などで飼い主が不明の場合や、連絡先が虚偽で連絡がつかない場合には、警察または都道府県が管理する動物愛護センター等に犬を届けるべきでしょう(同法4条1項・3項、13条1項)」

動物愛護センターが預かってくれるのだろうか?

「はい。ただし、動物愛護センターに保管されたとしても、条例により殺処分されることもあります」

飼い主は、ペットを預けたままにしておくと「殺処分」もありえるということを、しっかり認識しておく必要があるだろう。

●ペットホテルが打てる「対策」とは?

ペットの置き去りという悲しい事態を避けるために、ペットホテルが打てる手段はあるのだろうか?

「たとえば、次のような方法が考えられます。

(1)飼主の身分や連絡先の確認を厳重に行う

(2)第2の連絡先(返還先)なども必要に応じて記載させる

(3)預り金方式を採用して、飼主が引き取りにきた場合に精算する

(4)ペットホテルの約款に、飼主の引き取りが遅れた場合の規定を定めておく」

坂野弁護士はこう、アドバイスを送っていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

坂野 真一
坂野 真一(さかの しんいち)弁護士 ウィン綜合法律事務所
ウィン綜合法律事務所 代表弁護士。京都大学法学部卒。関西学院大学、同大学院法学研究科非常勤講師。著書(共著)「判例法理・経営判断原則」「判例法理・取締役の監視義務」「判例法理・株主総会決議取消訴訟」(いずれも中央経済社)、「増補改訂版 先生大変です!!:お医者さんの法律問題処方箋」(耕文社)、「弁護士13人が伝えたいこと~32例の失敗と成功」(日本加除出版)等。近時は相続案件、火災保険金未払事件にも注力。

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