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「5年で3回」は厳しすぎる? 司法試験の「受験回数制限」を弁護士はどう見ているか
弁護士の資格を得るためには、司法試験を突破しなければならない

「5年で3回」は厳しすぎる? 司法試験の「受験回数制限」を弁護士はどう見ているか

弁護士や検察官、裁判官への登竜門である「司法試験」を受験するためには、法科大学院(ロースクール)を修了するか、「予備試験」に合格しなければならないのをご存じだろうか。しかも、せっかく苦労して受験資格を得ても、司法試験を受けられる期間は「5年以内」で、回数も「3回まで」という制限があるのだ。

だが、以前は受験の期間や回数に限りはなく、何年でも、何回でも、司法試験にトライすることができた。それに比べると、「5年で3回」という制限は、ちょっと厳しすぎるのではないか。そんな声も出ていた。

そんななか、厳しい受験制限を少しゆるめて「5年で5回」とするよう、政府が司法試験法を改正する方針だというニュースが流れた。報道によると、受験回数を増やすことによって、司法試験の合格率を上げるのが狙いだとされている。

このような動きをうけ、弁護士ドットコムでは、本サイトに登録している弁護士を対象に、「司法試験の受験回数は何回であるべきか?」というアンケートを実施した。91人の弁護士から回答が寄せられ、次のような結果となった。

(1)受験回数を「5年で5回」とする案に賛成である

   →19人

(2)現状通り、受験回数は「5年で3回」のままでよい

   →17人

(3)旧司法試験のように、受験回数に制限を設けるべきではない

   →49人

(4)その他

   →6人

最も多い票を得たのは、「旧司法試験のように、受験回数に制限を設けるべきではない」という答えで、アンケートに回答した91人の約半数にあたる49人の弁護士が支持した。

●受験回数を増やしたからといって意味はない!?

政府が検討中とされる「5年で5回」という改革案を支持する弁護士は19人で、必ずしも多いとはいえない。政府案に批判的な弁護士は、なぜそう考えるのだろうか。いくつかの声を拾ってみると、次のようなものだ。

「5年3回より5年5回の方が分母は増えるのだから、確実に合格率が下がり合格までの年数が延び、旧試験化する。受験生のベテラン化等旧試験の弊害から新試験が生まれたことを再認識してほしい」

「合格率をあげる目的ならば、合格基準点数を下げるとか、合格者の人数を増やせばよいだけのことです。受験回数を変えたからといってどうなるものでもないでしょう。回数制限というものは受験者を萎縮させるものであり、よい結果が生まれるとは到底思えません」

「法律家全般に関係することをあまり頻繁に改正すべきではないと思います」

●「試験ではなく法科大学院に課題がある」という声も

2004年にはじまった法科大学院(ロースクール)制度について、思うところがある弁護士も多いようだ。

「法科大学院を修了していなくても、司法試験を受験できるようにすべきである。法科大学院には、会計大学院と同様に一部科目の免除の特典を与えるとよい。それに伴い法科大学院生は減少するだろうが、弁護士になってからの教育の場にすればよい」

「現状の司法試験制度は非常に良いと思います。択一も幅広く問うているし、論文についても選択科目も含めて良問が出されています。問題は教育する側ではないでしょうか。法科大学院を修了したにもかかわらず、基本的なことすら書けない方が多数おられます。結局、予備校に行くかどうかで勝負が決まっています。法科大学院の教育を何とかすることが喫緊の課題であると思います」

●予備試験は法科大学院の崩壊につながっている?

2011年からは、合格すると、法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格が得られる「予備試験」が始まった。この予備試験には対しては、賛否両論があるようだ。

「予備試験の合格者が増加し、事実上本来の司法試験としての機能を果たすようになってきています。法科大学院制度の存続を前提とするならば、法科大学院修了者には、司法試験の短答式試験を免除する位の特典がないと、制度自体がたちゆかなくなるのではと考えます」

「法科大学院という制度自体の理念は決して間違っていないと思います。しかし、予備試験を設けたことが、法科大学院の崩壊につながっていることは確かですから,私は予備試験を廃止すべきだと考えます」

「ロースクールに行けない人たちも法曹になる機会を広く認めるべきと考えるので、予備試験の合格枠をもっと拡大する方がよいと思う」

●「旧試験に戻すべき」という声も

一方で、2011年を最後に廃止された「旧司法試験」に制度を戻すべきという声も、少なからずあった。

「旧司法試験で特に問題があったとは思えず、元に戻せばよいのではないかと思います。旧司法試験の方が仕事をしながらでも続けることができたりと、『多様な人材』の確保に資したのではないかと」

「旧試験は一発勝負で不適切だとして改革がなされました。しかし、一発勝負の何が悪いのか説明らしい説明はありません。弁護士は依頼者のために証人尋問等の一発勝負に勝たなければなりません。一発勝負で勝つこと自体法律家としての適性を判断する上で重要な要素です。速やかにロースクールを廃止し、旧試験に戻すべきだと思います」

このように弁護士たちは、かつて自分たちも受験した「司法試験」について様々な意見を持っている。政府には、こうした司法の現場の意見も参考にしながら、法曹を育てる仕組みをより良いものにしていくことが求められている。

(弁護士ドットコムニュース)

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