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「いまだに口頭で発注」「著作権に触れるのはタブー」公取委が放送局の下請実態調査
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「いまだに口頭で発注」「著作権に触れるのはタブー」公取委が放送局の下請実態調査

テレビ局と番組制作会社の力関係について、その実態が公正取引委員会の調査によって浮き彫りになった。公取委は7月29日、テレビ局から番組制作を下請けする280社からの回答をもとにした調査結果を発表した。公取委は「テレビ局等による優越的地位の濫用規制上問題となり得る行為が行われていることが明らかとなった」としている。

独占禁止法や下請法に違反する恐れがあるとして、日本民間放送連盟などを通じ、テレビ局に法令順守を働きかけるそうだ。

●調査で浮き彫りとなった過酷な実態とは?

昨年テレビ局側と取引があった109社のうち、39%が「独禁法違反にあたる行為を受けた」と回答。具体的には、「買いたたき」(採算困難な取引)が20%、「著作権の無償譲渡」(13%)、「不当な番組制作のやり直し」(12%)、「番組の二次利用で収益を配分しない」(10%)などがあげられた。

独禁法は、取引で優越する地位を利用し、不利益になる取引を受け入れさせることを禁じる。しかし、資本金の額が小さく、特定のテレビ局に取引を依存する番組制作会社ほど問題となり得る行為を受けた割合が高くなる傾向もみられた。

また、取引条件等を記載した書面の交付状況を「交付していない」又は「交付しなかったことがある」テレビ局は(15.9%)にのぼり、杜撰な対応も明らかになっている。

こうした取引がまかり通っている理由についても、報告書は言及。「採算確保が困難な取引(買いたたき)」、「著作権の無償譲渡等」などの不利益を受け入れたテレビ番組制作会社のすべてが、「要請を断った場合に、今後の取引に影響があると自社が判断したため」または「テレビ局等から今後の取引への影響を示唆されたため」を理由として回答していた。

●「見積書の金額を全く無視した発注書」

以下が報告書に盛り込まれた制作会社の不満の声だ。

「テレビ局等から発注書面が交付される時期は、納品後がほとんどである」

「契約書についても、入金が終わった後で締結することが多々ある。ある地方のテレビ局等では、発注書等の書面の交付はなく、いまだに口頭で発注が行われている」

「当社から著作権のことに触れるのはタブーのような感じになっており、協議するよう主張することもできない。当社は、テレビ局等各社と特に協議することなく、このような契約を締結させられている」

「テレビ局等からは確定した金額を一方的に伝えられるので交渉の余地はない」

「当社が提出した見積書の金額を全く無視した制作費が記載された発注書が郵送されてきた」

●「音楽イベント等のチケットの購入要請がある」

「先方のプロデューサーは、『予算を超えても撮ってくるように。』とか『今回予算を超えた分は次の番組で取り返してほしい。』などと土台無理なことを言ってくる」

「先方との打合せで決まった起用予定のタレントが、タレント事務所と交渉したら都合が付かず、代わりのタレントを用意しなければならない場合がある。そのような時に、出演料の安いタレントを用意すれば、番組の格が落ちると言われ認められず、仕方がないので、当社の費用負担で出演料が1割2割高いタレントを用意せざるを得ないといったことがある」

「取引先のテレビ局等の営業担当者から、年に1回程度、『もしよかったら買ってくれませんか。』などと音楽イベント等のチケットの購入要請がある。当社としては、今後の取引のことも考えて購入している」

「当社が撮影し、結果的に番組に使用しなかった映像についても、テレビ局等に著作権が帰属することになっている。そのため、番組に使用しなかった風景や、事故現場などの特ダネの映像素材も当社は使用することができない」

(弁護士ドットコムニュース)

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