入試や定期試験などで、しばしば発覚する「カンニング」。紙を持ち込んだり、他人の答えを盗み見たりといった伝統的な手法のほか、近年では試験中に携帯などを使い、インターネットで調べるというケースが大問題となっている。今年初めには、名門米ハーバード大学の学生約70人がカンニングで退学になった事件が起き、世界を揺るがすニュースとなった。
日本の大学や高校でも、カンニングで退学になる可能性はあるのだろうか? また学生や生徒を退学にする条件について、法律の決まりはあるのだろうか? 教育現場にくわしい宮島繁成弁護士に聞いた。
●日本の学校で「退学」になる4つの場合
「日本の場合、退学の要件は『学校教育法施行規則』で次のように定められています。
(1)性行不良で改善の見込がないと認められる者
(2)学力劣等で成業の見込がないと認められる者
(3)正当の理由がなくて出席常でない者
(4)学校の秩序を乱し、その他学生または生徒としての本分に反した者」
この4つのどれかに当てはまる場合、退学処分が行われるようだ。
それでは、カンニングは4つのどれかに当てはまるのだろうか。
「カンニングは、さきほど紹介した退学要件の(4)に当たり、退学の理由となります。
ただ、カンニングをしたらすべて退学というわけではなく、裁判でも、退学が学生や生徒におよぼす影響を考慮して、改善の見込みがなく教育上やむをえない場合に限定しています。このため、1回のカンニングだけで退学になることはまずないと思います。
もっとも、大規模なカンニングを主導して計画したような場合や、ほかの多数のテストでもカンニングしていたことがわかったような場合は、1回のカンニングで退学になることもありえます」
●カンニングは「信頼関係」への裏切り行為
ハーバード大学では大規模な処分が行われたようだが、日本でそこまでの話は聞いたことがない。日本はカンニングに「甘い」のだろうか?
「ハーバード大学の場合は、規模が大きかったことのほか、持ち帰り形式(テイクホーム・エクザム)のテストだったことも大きな理由だと思います」
この「テイクホーム・エグザム」というのは、名前が示すとおり、「自宅に持ち帰って、問題を解く試験」のことだ。そのルールは、問題を回答するにあたって文献やインターネットなどを参照してもいいが、「仲間との相談はダメ」というものだったようだ。
宮島弁護士は「つまりやろうと思えば簡単にカンニングできる形式だからこそ、学生への強い信頼が要となっており、今回はその信頼が大きく裏切られた、ということでしょう」と指摘する。こうした形式のテストでは、学生の責任もそれだけ大きいと言えるのだろう。