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「朝食で地元のコシヒカリを食べよう」 新潟県南魚沼市「コシヒカリ条例」の狙いは?
朝食で地元産のコシヒカリを食べることを市民に求める条例が、新潟県の南魚沼市議会で可決された

「朝食で地元のコシヒカリを食べよう」 新潟県南魚沼市「コシヒカリ条例」の狙いは?

朝ごはんには地元産のコシヒカリを! 朝食で地元産のコシヒカリを食べることを市民に求める一風変わった条例が9月中旬、新潟県の南魚沼市議会で全会一致で可決された。この条例には、ほかにも生産者による品質の確保や、市が給食で使うことなどが規定されている。

南魚沼市といえば、ブランド米「魚沼コシヒカリ」の産地として有名な米どころだ。この条例にはどんな狙いがあるのか? なぜ朝ごはんなのか? 南魚沼市議会の山口恒一事務局長に取材した。

●「南魚沼ブランド」にあぐらをかいていられない

「世界に冠たるブランド農産物である南魚沼産コシヒカリの普及促進を図ることを目的とする」

全部で5条からなる条例の第1条には、このような目的が掲げられている。魚沼コシヒカリといえば偽物が出るほどの米のトップブランドだ。その魚沼コシヒカリの中でも、南魚沼市産は特に人気が高い。なぜ今、こういう条例を作る必要があったのだろうか。

「最近は全国的に稲の品種改良が進み、栽培技術の水準も上がってきています。いつまでも南魚沼ブランドの上にあぐらをかいていては、そのうち追いつかれ、追い越される時期が来てもおかしくないという危機感がありました。今あらためて、行政・生産者・市民が一体となって魚沼コシヒカリを食べて盛り上げようということで、この条例の制定につながったわけです」

と山口事務局長はいう。有名産地でもそんな危機感があるとのことだが、この条例制定を機に、市内の旅館や飲食店などに、地元産コシヒカリの活用を働きかけていく方針だという。

条例の第2条では、教育現場は「給食等にコシヒカリ又は加工品を用いるように努めるものとする」とあるが、給食にも魚沼コシヒカリが出るということか。

「実はすでに学校給食では、週4日が『ご飯の日』となっています。そこで使われているのが地元産のコシヒカリなんですよ」

魚沼コシヒカリが高嶺の花の他の地域から見ると、すでにうらやましい給食になっているわけだ。

●コシヒカリ条例のもう一つの目的は「食育」

そして、この条例の第4条2項では、市民は「特に朝食ではコシヒカリ又はその加工品を用いるように努めるものとする」という規定がある。なぜ「朝食」なのか。

「この条例は食育が目的でもあるんです。文部科学省の調査で、朝食を食べる生徒の方が食べない生徒と比べて学力や体力が高い傾向にあることが分かっていますし、朝ごはんはしっかり栄養のあるものを食べてほしい。また、朝は一番家族がそろいやすい。家族みんなが顔をそろえてコシヒカリを食べてもらいたいですね」

ちなみに、「朝食にコシヒカリを」というのは「努力目標」で、拘束力があるわけではない。ただ、市はこの条例を受けて、朝食にどれだけコシヒカリが食べられているかを調べるアンケートを行う予定だという。

第5条2項では、毎年10月10日を「南魚沼市コシヒカリの日」とすると定めた。

「これは、『米』という字は『十』を2つずらして重ねあわせたように見えるということで10月10日に決まりました。ちょうど新米の時期でもありますし」

来年以降、この日に市を上げてのイベントなども行っていきたいという。今年は制定したばかりということで、イベントは少なかったようだが、

「もう新米が出ています。南魚沼はスキーが有名ですが、四季を通じて楽しめるところですよ」

と同事務局長はいう。秋の行楽シーズンは、新米や地酒に、紅葉や温泉と、遠出して南魚沼の味覚や自然を楽しむのもいいかもしれない。

【取材協力】

南魚沼市(みなみうおぬまし)

2004年六日町と大和町の2町が合併し成立。翌年塩沢町を編入。豪雪地帯で10カ所のスキーリゾートを擁する。直江兼続や上杉景勝の出身地として2009年NHK大河ドラマの舞台ともなり注目を集めた。米どころ、酒どころとしても知られる。

(弁護士ドットコムニュース)

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