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同僚のボーナスのために「解雇」を告げられたら・・・映画「サンドラの週末」で考える
マリオン・コティヤール演じるサンドラ(右)は同僚への説得を試みる

同僚のボーナスのために「解雇」を告げられたら・・・映画「サンドラの週末」で考える

ほかの同僚のボーナスをひねり出すため、あなたを解雇しますーー。もしそんな理由で、会社から「クビ宣告」を受けたら、どうするだろうか。会社と徹底的に戦うか、素直にあきらめるか、それとも・・・。

そんな理不尽な解雇通告を受けた女性の行動を題材にした外国映画『サンドラの週末』が5月23日、全国で劇場公開される。その公開にさきだち、東京都内で5月20日、映画を通して労働問題を考えるシンポジウムが開かれた。主催したのは、学生アルバイトの労働問題に取り組む労働組合「ブラックバイトユニオン」だ。

●復職しようとしたら、解雇を通告された

映画の舞台は、ベルギーのとある町。主人公のサンドラ(マリオン・コティヤール)は、飲食店でコックをしている夫・マニュ(ファブリツィオ・ロンジォーネ)と2人の幼い子と暮らしている。サンドラはソーラーパネルの工場で働いていたが、体調を崩して、しばらく仕事を休んでいた。

復職しようとした矢先の金曜日、サンドラは突然、解雇を言い渡される。会社の言い分は「16人の社員に1000ユーロ(15万円弱)のボーナスを支払うには、1人解雇する必要がある」というもの。だが、サンドラ夫婦の貯えは決して多くなく、もし失業となれば、ようやく手に入れたマイホームも手放さざるを得ない。この町では、転職しようにも仕事はほとんどない。

解雇に納得できないサンドラは、仲の良い同僚の取りなしで、週明けの月曜日に16人の同僚たちによる投票を行い、「ボーナスをあきらめて、サンドラの復職を支持する」という票が過半数を超えれば、仕事を続けられることになった。サンドラは土日をかけて、同僚たちをなんとか説得しようと試みる——。そんなストーリーだ。

●「おかしいんじゃないの?」から一歩を踏み出す

映画の試写会に続いて、トークイベントがおこなわれた。登壇した「ブラックバイトユニオン」代表の渡辺寛人さんは、彼らの活動と『サンドラの週末』には共通点があると指摘した。

「この映画のすごいところは、主人公が自分の解雇を撤回させるために、『ボーナスをあきらめて』と同僚を説得するところ。本人が『おかしいんじゃないの?』と思って一歩を踏み出さないと、誰も解決してくれない。

でも、ブラックバイトユニオンに寄せられる相談事例では、不当な目に遭っても、あきらめてしまう人が多い。たとえば、残業代が支払われないことについても、多くの人は『自分に能力がないからだ』と自分を責めるだけで、解決するための行動を起こしていない。

ユニオンの相談活動では、自分を責めている人に対して『悪いのはあなたじゃなくて会社。正しい事を主張して、一緒に頑張ろう』と説得して、解決を目指していっている」

一方、シンポジウムの会場にいた、ブラックバイトの経験者という大学4年生の男性は、自らの体験をまじえながら、現実の厳しさを指摘した。

「以前、アパレル関係の職場でバイトをしていたとき、ふだんは仲よく働いていた同僚に、『用事があるので、シフトを代わってほしい』と言っても、断られることが多かった。ふだん仲がいい同僚でも、誰かのために犠牲になれる人は少ないと思う。職場で『仲がいい』ことと、『人と人との関係でつながる』ことは、全然違う次元の話なのだと、映画を見て改めて感じた」

●「同僚との連帯が生まれる過程が描かれている」

『サンドラの週末』の監督であるダルデンヌ兄弟は、「弱さへの礼賛」というテーマをこの映画に込めたという。配給会社ビターズ・エンドのPR担当の藤森朋果さんは、映画の見どころについて、次のように話していた。

「職場でしか話をしていない人との関係はとても希薄ですが、サンドラが同僚1人1人の家を訪れて説得をすることで、はじめて相手が抱える貧困や夫婦間のトラブル、移民の問題などを知り、同僚との連帯が生まれる過程が描かれています」

『サンドラの週末』は5月23日から、東京・渋谷の「Bunkamuraル・シネマ」など全国の映画館で公開される。

予告編はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=7K_5f0U8E2M

(弁護士ドットコムニュース)

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