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ストーカーやDVの深刻化防止に「法テラス」を活用――総合法律支援法が改正へ
日本弁護士会の谷萩陽一副会長

ストーカーやDVの深刻化防止に「法テラス」を活用――総合法律支援法が改正へ

ストーカーやドメスティック・バイオレンス(DV)の被害者らを、日本司法支援センター(法テラス)の弁護士につなぎ、深刻な被害を未然に防ぐ。そんなことを狙った「総合法律支援法」の改正案が、今国会で審議されている。

被害者から法律相談をうけた法テラスの弁護士は、警察に被害届を出したり、DV・ストーカーに詳しい弁護士を紹介したり、一時的な避難先のシェルターを紹介したりすることが想定されている。被害者に経済力がなければ、法律相談は無料になる。

総合法律支援法は、さまざまな司法制度をより利用しやすくするためのルールや、その中核組織である法テラスの運営について定めた法律。今回の改正案ではほかにも、高齢者・障害者や大規模災害の被災者への法律支援の枠組みが拡充されている。

●法律相談「その後」は?

一方、日弁連は、この改正案に対して次のような「問題点」を指摘している。

まず、制度の対象となる行為が、ストーカー規制法の「つきまとい」や、児童虐待防止法の「児童虐待」、DV保護法の「配偶者からの暴力」に限定されている点だ。日弁連は「この3つに当たるかどうか微妙なケースにこそ、支援が必要だ」としている。

また、法律相談をしたあと、相談者に経済力があることがわかったら、「負担金」の支払いを求める点についても、「負担金のせいで、そもそも法律相談をためらってしまう可能性」があると懸念している。

さらに、たとえ無料で法律相談を受けることができても、その後のサポートがない点が問題だとしている。

被害者は、法律相談を受けたあと、自分で弁護士費用を払うか、従来からある立替え制度の「民事法律扶助」などを頼ることになる。

ところが、民事法律扶助では、シェルターなどとの交渉がカバーされず、児童虐待を受けた「子ども」が利用できないといった欠点がある。日弁連が「援助」をする制度もあるが、こちらは弁護士たちが人権擁護の観点から援助するという枠組みで、限界があるという。

●「さらなる改善」を求める

日弁連の谷萩陽一副会長は5月14日、日本弁護士会館で開いた記者会見で、「法案は、法律支援の仕組み・理念を拡大する内容ですから、日弁連としても成立することを歓迎します。しかし、法案の内容は、有識者検討会が2014年に出した報告書と比べて後退していて、まだまだ不十分な点もありますので、今後さらなる改善を求めていこうと考えています」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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