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小学生の息子が同級生に「一生残る傷」をつけられた――学校に慰謝料を請求できるか?
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小学生の息子が同級生に「一生残る傷」をつけられた――学校に慰謝料を請求できるか?

「息子が、障害がある同級生に暴力を振るわれて、一生残る傷を負った」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、ケガをした子供の母親から相談が寄せられた。

相談者の息子が通う私立小学校は、身体的に障害がある子供と健常児が同じ教室で学んでいる。1年ほど前、障害のあるクラスメイトが、図工の授業中に暴れ出したものの、担任はそのまま授業を続けていた。そして、相談者の息子は、鉛筆で顔を引っ掻かれ、口の横に一生残る傷を負ってしまったという。

母親は、学校側に安全対策への対応と説明を求め、結論がでるまでは補助教員をつけるよう要請した。しかし、学校は何の説明もせず、勝手に補助教員をはずす始末だという。相談者は、このまま安全策がとられないまま、うやむやにされるのではないかと不信感を抱いている。

そこで、学校と担任教諭に対して慰謝料を請求したいと考えているが、可能なのだろうか? 元小学校教諭で学校問題にくわしい畑中優宏弁護士に聞いた。

●学校に慰謝料を請求できる?

「結論としては、慰謝料を請求できます」

畑中弁護士はこう述べる。どのような理由だろうか。

「今回のケースではまず、担任の教師に責任があります。授業中、しかもいろいろな道具を使う図工の時間に暴れている児童がいる場合、他の児童に危害を及ぼすかもしれないことは、容易に予測のつくことです。

にもかかわらず、何も対処しなかったのですから、少なくとも怪我をさせたことについて過失があります。ですから、その担任は、損害賠償の責任を負います」

畑中弁護士はこのように説明する。では、学校に対しても責任を問えるのか?

「学校は、その担任の使用者ですから、使用者責任といって、損害賠償の責任を負うことになります。

また、私立学校と児童らの間には、私法上の契約関係があります。学校は、所属する児童らの安全を確保する義務があるため、その義務を怠ったという理由でも、損害賠償の責任を負います。これを『債務不履行責任』といいます」

危機管理を怠った学校にも責任があるようだ。

「損害賠償の範囲は、治療費はもちろんですが、顔に一生残る傷が残った場合、慰謝料の請求も可能と思われます。

さらに、私立学校と児童の契約関係の中には、児童らが怪我を負った場合、学校が事件について調査し、保護者らに説明する義務も含まれると考えられます。

ですから、そのような説明義務を果たさない場合、損害賠償の責任を負う場合があります」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

畑中 優宏
畑中 優宏(はたなか まさひろ)弁護士 弁護士法人湘南よこすか法律事務所 逗子事務所
公立小学校の教員を8年間勤めた後、弁護士をめざして司法試験に合格しました。学校現場の問題には詳しく、相談も多く受けています。

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