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「もうクリアしたから金返して」そんな理由で「ゲームソフト」を返品ーー認められる?
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「もうクリアしたから金返して」そんな理由で「ゲームソフト」を返品ーー認められる?

「もうクリアしたからお金返して欲しい」「難しすぎてクリア出来ないから返品したい」。そんな要求を客から受けたというゲームショップのスタッフの体験談がツイートされ、話題になった。

投稿者は「最初に対応した際には耳を疑いました」と述べているが、同業者とみられる人から、「月に1回くらい来ますね。うちの子供には難しすぎたーとか、面白くないから返品ーとか」「ゲームショップあるあるですよね」という投稿が寄せられていた。

だが、そのような理由で返品することが認められるのだろうか。消費者問題にくわしい前島申長弁護士に聞いた。

●ゲームの売買契約は有効に成立している

「『クリアしたから』『難しすぎてクリアできないから』という理由で、返品をすることは、基本的にはできないでしょう。

ゲームショップでゲームソフトを購入する場合、売主であるショップの主な義務は、財産権を移転することです。客から代金を受け取って、ゲームソフトを客に引き渡すことで、売買契約が成立しているからです。

返品が認められるためには、契約の成立を否定する事情があることが必要です」

契約の成立を否定する事情としては、どんなことが考えられるだろうか。

「民法95条の『錯誤無効』が考えられます。

錯誤というのは、簡単に言えば勘違いのことです。ただ、どんな勘違いでもよいわけではありません。

ゲームソフト売買契約の重要部分に錯誤があり、一般の人を基準にして、『勘違いがなかったらゲームソフトを買わなかった』といえることが必要です」

●どちらも返品の理由にはならない

今回のケースでは、錯誤無効が認められるだろうか。

「『クリアしたから』という理由は、そもそも、何も錯誤におちいっていないので、錯誤無効は主張できないでしょう」

では、「難しすぎてクリアできない」はどうだろうか。

「『難しすぎてクリアできない』ということは、『クリアできる程度の難易度のゲームだ』ということが購入の動機のひとつだったのでしょう。

ただ、ゲームの難易度は、購入者によって多様ですから、難易度が高すぎるかどうかは、なかなか判断が難しいところでしょう」

結局、返品は難しそうだ。

「ゲームソフトのパッケージに『幼児用』と書いてあるのに、難易度が極めて高く、一般社会人を対象としたようなゲーム内容になっているような、きわめて例外的な場合には、錯誤無効が認められる余地があります。ただ、通常、メーカーがそのような商品を提供するとは考えにくいでしょう」

前島弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

前島 申長
前島 申長(まえしま のぶなが)弁護士 前島綜合法律事務所
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属 交通事故・不動産紛争などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。中小企業の事業継承や家族信託などに注力を行っている。

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