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日本の「難民認定」年間11人ーー申請者5000人の大半が認定されないのはなぜ?
難民認定申請者と認定者数の推移(2005-2014)

日本の「難民認定」年間11人ーー申請者5000人の大半が認定されないのはなぜ?

日本政府に「難民」として認定してもらおうと申請する外国人は年々増えているが、実際に難民認定される人数は多くなく、2014年に認定されたのは11人だったーー。そんな事実が、法務省の公表データから明らかになった。

法務省入国管理局によれば、2014年の難民認定の「申請者」は5000人(対前年比+1740人)。難民と認定されなかったケースでの「異議申し立て」は2533人(対前年比+125人)だった。申請と異議申し立ての人数はいずれも、日本で難民認定制度が始まった1982年以降で最多の数字になったという。

しかし、2014年に難民として認定された外国人は11人にすぎず、認定率(対申請者)はわずか0.2%だった。なぜ、このような数字になっているのだろうか。日本の難民認定の現状と問題点について、審査と決定をおこなう法務省入国管理局の担当者に話を聞いた。

●「難民条約」が規定する「難民」とは?

日本は1981年に「難民の地位に関する条約」(以下、「難民条約」)に加入し、その翌年、難民認定を始めている。2014年までに日本で認定された「難民」は、累計で633名にのぼる。

難民条約が規定する「難民」とは、「人種、宗教、国籍、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由として迫害を受けるおそれ」があり、かつ、その国をすでに離れている人のことだ。

難民の認定を受けると、永住許可のほか、国民年金や福祉手当などの受給資格が得られる。

「かつて『インドシナ難民』の時代には、『ボートピープル』などとも言われましたが、決して全員がボートで来たわけではありませんでした。コンテナをあけたら人がいた、というのも日本ではあまりありません。現在、日本への難民申請者は飛行機にのってきています」

入国管理局難民認定室の小田切弘明補佐官はこう語る。

難民申請をおこなう外国人は、日本に入国した後、全国にある入国管理局事務局で手続きを始める。難民申請後のプロセスは、日本での在留状況が、正規か非正規によっても異なる。

正規とは、観光や留学、技能実習制度などで入国してくるケース。非正規とは、いわゆる「不法滞在者」のことだ。2014年には、5000人の難民申請者のうち正規が4134人で、非正規は836人だった。

「申請している間も、正規で入国した人の場合は、申請から6カ月以降は就労が認められます。しかし、非正規の場合は認められません」

●「日本で働きたいから」という理由の申請も

2014年の数字をみると、5000人の難民申請者に対して、認定者は11人にすぎなかった。この数字は少なすぎるのではないか。

「難民の認定制度は国によって様々であり、認定数が少ないからといって、一概におかしいということにはならないと考えています」

このように小田切補佐官は述べる。

「申請理由をみると、難民条約で規定する『国家から迫害を受けている』事実がないのに申請するケースも多く見受けられます。具体的には、母国で借金があるから、相続争いがあったから、あるいは、日本で働きたいからといった理由です。

このように申請理由は、必ずしも政治的な原因ばかりではありません。政府からの迫害を理由にあげる割合は、わずか10%ほどです。難民認定の趣旨を理解せずに申請する人もいれば、悪用が含まれている可能性もあるのではないかと考えています」

難民申請者は、2005年にわずか384人だったのが、2014年は5000人と、10倍以上に増えている。このよう申請者数が増加しているのは、難民申請の「悪用」も関係しているのだろうか。

「さきほど述べたように、正規の在留者から難民申請があった場合、申請から6カ月経てば、就労が認められます。2010年3月から導入された措置ですが、これを機に、認定申請数が増えています。

また、非正規の在留者からの申請数はほとんど変わらず、就労が認められる正規の申請数だけが増えていることからも、就労目的の申請が含まれているのではないか、と感じています」

●母国が戦争状態にあるだけでは「難民」認定されない

難民の申請から認定結果が出るまで、平均で約7カ月かかるという。仮に認められなかった場合、異議申し立てをするケースもあるが、その結果が示されるまで、さらに約2年〜2年半の時間が必要となる。つまり、約2年間は正々堂々と「就労」ができるというわけだ。

ところで、今年3月、4人のシリア人が難民認定を求めて裁判を起こしたが、390万人を超えるシリア難民受け入れは国際社会にとって切迫した問題だ。シリア難民については、どんな判断をするのだろうか。

「戦争状態であることだけをもって『難民』と認定することはできません。戦争状態にあることに加え、難民条約上の『5つの要件』のどれかに該当する場合のみ、難民と認められます。シリアも例外ではありません」

こうした難民条約の要件を厳格に適用しようとする日本の「認定基準」に対しては、厳しすぎるのではないかという批判も多い。その一方で、就労目的での難民申請について、就労を認めないような制度の見直しも求められているのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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