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23時以降のシャワー禁止! 賃貸物件「特約」大家さんのわがままはどこまでOK?
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23時以降のシャワー禁止! 賃貸物件「特約」大家さんのわがままはどこまでOK?

新生活にむけた引っ越しが一年でもっとも多い今の時期。立地、家賃、築年数などチェック項目は多くあるが、見過ごしてはいけないのが「特約」だ。特約とはいわゆる「入居ルール」のことで、甘く考えていると、入居後に困った事態になるかもしれないのだ。

「23時以降のシャワー利用は禁止というマンションに住んでしまったため、遅くなった日は、息を殺すようにしてシャワーを浴びています。マンション内の掲示でも盛んに注意が呼びかけられていて、プレッシャーを感じるんです」(東京都渋谷区・20代女性)

こんな声もあるからだ。弁護士ドットコムニュースのツイッターアカウントにも先日、次のような相談が寄せられた。

「賃貸物件のアパートで条件として門限を設けることってできるのですか? ちなみに門限が21時ということです。現実的に不可能な感じにも思えるのですが」

大家さんが定める「特約」は実にさまざまだ。物件情報をみると、「石油ストーブ禁止」「正社員限定」「女性限定」「男性限定」「子ども不可」などがならぶ。このような「特約」について、大家さんはどこまで、わがままを盛り込めるのだろう? 

●大家さんのワガママも必要性・合理性があれば問題ない

関戸淳平弁護士は「大家さんの希望」すなわち「特約」について、次のように解説する。

「大家さんの希望(特約)が、すべて認められるわけではありません。

特約を定める必要性がない場合や、ルールの内容に合理性がない(行きすぎた)場合には、消費者契約法や民法によって無効となります。

大家さんが何ら必要性もないのに、入居者の生活に介入するようなルールを設けた場合は、無効と判断されることになるでしょう」

なかには、入居者の生活領域に踏み込んでくる契約もあるが、必要性・合理性が認められるケースもあるのだろうか。 

「入居者を縛る特約も、その必要性・合理性があれば、有効となります。近年では、『ミュージシャン限定』『ペット共生型』『ガレージ付き』など、さまざまな『コンセプト型賃貸住宅』が誕生しており、入居者も一般賃貸住宅との違いに価値を見いだして、契約をするケースが増えています

このような住宅では、コンセプトの実現のために、特殊なルールを定めることが認められやすくなります」

コンセプト型賃貸住宅は、賃貸物件の空き家対策としても有効だという。広く一般ではなく、明確な特徴に共感する層を売りにすることで、築年数が古かったり、駅から遠くても、「特約」に魅力を感じる人がいれば入居を望むからだ。

●特約を守らなかったら「即退去」というわけではないが・・・

ところで、珍しくないのが「入居者本人以外の入館・入室・宿泊禁止」なるルール。一人暮らしの住人に、家族や恋人の宿泊を禁じても、誰も守らないのではないだろうか・・・。

「『入居者以外の入室を禁止する』といった特約も、『女性限定』や『ハイセキュリティー』を売りにしている物件のような場合には、有効となりやすいでしょう。

一般の賃貸住宅であっても、事情によっては特約を設けることができます。入居者間で騒音トラブルが生じているような物件においては、第三者の宿泊や浴室の利用時間についてルールを定めることが、やむをえないと判断されることもありえます」

では、賃貸物件の契約で、大家さんの出す「条件」を守らなければ、退去しなければいけないのだろうか。 

「特約に違反したとしても、それがすべて『契約解除(立ち退き)』につながるとは限りません。形式的に賃貸借契約に違反していても、大家さんとの『信頼関係』を破壊するまでに至っていなければ、契約解除までは認められない、というのが裁判所の考え方です」

ただ、特約違反が続けば、大家さんとの信頼関係は確実に損なわれていくに違いない。賃貸契約を結ぶとき、「どうしても守れない」と思う「特約」が入っていた場合は、その物件を避けるのが無難なのだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

関戸 淳平
関戸 淳平(せきど じゅんぺい)弁護士 横浜ユーリス法律事務所
中央大学法学部卒。2004年弁護士登録(横浜弁護士会)。2009年より横浜ユーリス法律事務所パートナー。不動産売買、賃貸、マンション問題、相隣問題等、不動産に関連する事件を数多く手がけている。

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