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接客女性に「苦情」言ってつきまとう「クレームストーカー」 どう対処すればいいの?
ストーカーの被害が後を絶たない

接客女性に「苦情」言ってつきまとう「クレームストーカー」 どう対処すればいいの?

企業の窓口として電話応対や接客を担当する女性に、苦情を装ってつきまとう「クレームストーカー」の被害が問題視されている。

毎日新聞の1月上旬の報道によると、ある育毛サロンの店長だった30代の女性は、客の男性からクレームを理由にしつこく面会を要求され、最終的には異動を余儀なくされた。その後、男性から女性個人に対して、慰謝料を請求する裁判まで起こされたという。

こうした「クレームストーカー」は、ストーカー規制法で取り締まることはできないのだろうか。また、企業として、どういった対応をすべきなのだろう。ストーカー問題にくわしい池田伸之弁護士に聞いた。

●「ストーカー規制法」での規制は難しい?

「ストーカー規制法は、大まかに説明すると、つきまとい等の行為に対して、次のような形で対策を規定しています。

(1)警察署長等が警告を出す

(2)ストーカーが警告に従わない場合、公安委員会がつきまとい等を禁止する命令を出す

(3)ストーカーがその命令にも従わない場合は、刑事罰の対象とする」

クレームストーカーに対しても、こうした対策を講じることはできないだろうか。

「ストーカー規制法で対処するのは、難しいと思われます。

この法律で規制対象となっている行為は、単なるつきまといではなく、そこに『恋愛感情その他の好意の感情』または『そうした感情が満たされないことに対する怨恨の感情』を、満たす目的が必要だからです。

表面上であっても、サービスに対する『クレーム』という形をとっている場合、『恋愛感情がらみだ』と客観的に受け止められる言葉が出てこない限り、現実問題として、ストーカー規制法による規制は難しいと思います」

では、ほかに法的な対応策は考えられるだろうか。

「このような場合、軽犯罪法や迷惑防止条例等にも該当することが多いと思います。ただし、ストーカー規制法のように、警告、禁止命令という速効的な抑制手段が取れません。

警察で警告などを出してもらえないときは、弁護士に相談して介入してもらったり、民事上の面会禁止の仮処分申請などで対処してもらうことも、検討する必要があります」

●企業はマニュアルの整備を

企業側としては、どんな対応をすべきだろうか?

「特に接客サービスを運営する企業については、『すぐ社内に通報する』、『複数で対応する』、『上司が対応する』など、クレームストーカーに対する対応マニュアルを整備し、従業員に徹底する必要があります。

もし、これらの対策が採られず、従業員に被害が及んだ場合、従業員に対する安全配慮を怠ったとして、企業に損害賠償の責任が生じる場合もあるので要注意です」

池田弁護士はこのように指摘していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

池田 伸之
池田 伸之(いけだ のぶゆき)弁護士 池田総合特許法律事務所
愛知県弁護士会所属。企業法務などの企業案件の他、離婚、相続などの個人案件も多数担当しています。医療分野では、医療過誤事件の他、大学病院等の医療事故調査委員会の委員や厚労省の診療関連死調査のモデル事業の評価委員を務めています。

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