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競馬ファンが注目する「凱旋門賞」 ネットで「海外馬券」を買うのは問題か?
凱旋門賞は1920年から開催されている競馬の国際大会だ

競馬ファンが注目する「凱旋門賞」 ネットで「海外馬券」を買うのは問題か?

競馬の世界最高峰レース「凱旋門賞」が10月5日、フランスのロンシャン競馬場で開催される。日本からは過去最多の3頭が挑戦する。

ヨーロッパをモデルに発展した日本競馬界にとって、凱旋門賞制覇は悲願だ。今年は世界ランキングトップのジャスタウェイを筆頭に、宝塚記念を制したゴールドシップ、怪物3歳牝馬ハープスターの3頭が出走する予定で、ファンの期待が高まっている。

なかには、実際に馬券を買って、さらに盛り上がりたいという人もいるだろう。ネット上には、海外のブックメーカー(私設の賭け業者)から馬券を購入する方法を解説するサイトがいくつも存在する。だが、日本で賭博は禁止されているはずだ。ネットを通じて海外の馬券を購入することは、法的に問題ないのだろうか。津田岳宏弁護士に聞いた。

●日本の法律では海外のブックメーカーを取り締まれない

「オルフェーヴルには2年続けて良い夢を見させてもらいました。ジャスタウェイを筆頭に、今年も日本勢は強力布陣。日本馬が凱旋門賞を制覇する日がいよいよ近づいてきたという印象です」

自身も競馬ファンだという津田弁護士は、期待を込めてこう述べる。では、日本から凱旋門賞の馬券を購入する行為は問題ない?

「フランスに行って、その場で凱旋門賞の馬券を買うことは全く問題がありません。一方、日本でパソコン操作をして馬券を買うことは、形式的には賭博罪にあたる可能性があります」

なぜ、「形式的には」と限定をつけたのだろうか?

「実際に捕まる可能性は、高くないと考えられるからです」

たしかに、海外のブックメーカーから馬券を購入して、問題になったというニュースは耳にしない。どうして、そんな状況になっているのだろうか。

「まず、賭博罪は『対向犯』だということです。『対向犯』とは、ごく簡単に説明すると、二人以上の相互に向き合った行為が必要な犯罪類型のことです。

典型的な例では、『わいろ』を渡した人に成立する『贈賄罪』と、受け取った側に成立する『収賄罪』の関係がこれにあたります。

賭博罪も対向犯のひとつなのですが、今回のようなケースだと、対向関係の一方であるブックメーカーは、国外にあるので日本の刑法では処罰できません。にもかかわらず、もう一方である参加者のみを処罰できるのかという問題があるのです。

この論点については、判例がまだありませんので、結論はなんとも言えません」

つまり、賭博に参加した片側だけを処罰することができるのか、という話のようだ。

「もう一点、賭博罪はそもそも、風紀を乱すことを取り締まるためにできた犯罪類型なので、『公然性の高さ』が違法性に影響を与えます。

ところが、自宅やネットカフェのパソコンで馬券を購入する行為には、何ら『公然性』がないので、違法性が低いと考えられます。

このように、微妙な法的論点がある上、行為自体の違法性も低いので、積極的に摘発が行われていません。実際に捕まる可能性が低いといえます」

津田弁護士はこのような見解を示していた。

●日本の胴元を利用すれば、賭博罪にあたる

それでは、競馬ファンが、凱旋門賞を楽しむために、海外ブックメーカーで馬券を買っても、まったく問題はないのだろうか。

「いえ、そういうわけではありません。

違法となる可能性がある以上、たとえば、テレビでタレントなどが『ブックメーカーで馬券を買った』と公言することは問題かもしれません。

また、ブックメーカーで購入した海外の馬券でも、日本のノミ屋を利用した場合や、日本のネットカフェが胴元となっている場を利用した場合は、明らかに賭博罪にあたります。これらの場合は、日本の胴元を利用して賭博をしたことになるからです」

津田弁護士はこのように注意を促していた。実際に馬券を買って楽しみたいという競馬ファンは、慎重に行動したほうがよいかもしれない。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

津田 岳宏
津田 岳宏(つだ たかひろ)弁護士 京都グリーン法律事務所
京都弁護士会。京都大学経済学部卒業。著書に「カラマーゾフを殺したのは誰か?世界の名作でリーガルマインドを学ぶ」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)「弁護士には聞きにくいー知って助かる!法律相談」(青春出版社)、「賭けマージャンはいくらから捕まるのか」(遊タイム出版)など 賭博法改正を願う弁護士津田岳宏のブログ  http://tsuda-moni.cocolog-nifty.com/

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