「号泣議員」の不自然な政務活動費をめぐり、日増しに風当たりが強くなっている。兵庫県内の市民オンブズマン3団体は7月8日、野々村竜太郎・兵庫県議の政務活動費について、不正支出分を返還させるよう県知事に求める住民監査請求を共同で行う方針を決めた。
3団体の1つである「市民オンブズマン兵庫」の森池豊武代表は、弁護士ドットコムの取材に対し、「あの記者会見では説明が不十分だ。どういう理由で使ったのか、監査委員に対して説明すべきだ。議員辞職をして終わりにすることは認められない」と話している。
3団体は、野々村県議の政務活動費収支報告書などの情報公開請求をしており、今後、資料から不正支出を特定して、監査請求を行う方針だ。「住民監査請求」とはどのような仕組みになっているのだろうか。全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士に聞いた。
●監査結果に納得できない場合、住民訴訟に発展するケースも
住民監査請求は地方自治法242条に基づくもので、兵庫県のホームページには「地方公共団体の長などの職員に、違法または不当な財務会計上の行為があると認められるとき、監査委員に対し監査を求め、必要な措置を講じることを請求する制度」と記載されている。
新海弁護士が解説する。
「今回のケースに当てはめると、本来使っていないはずの政務活動費を使ったことが不当であるとして、監査を行い、返還させるようを求めるということですね」
住民監査請求は、具体的にはどんな仕組みになっているのだろうか。
「自治体の住民であれば、監査請求が可能です。それを受けて、地方自治体から独立した機関である監査委員が監査することになります。
監査委員は請求を受けてから60日以内に『勧告』か『棄却』か『却下』の判断を下します。
請求に理由があると認められた場合は『勧告』、認められない場合は『棄却』、請求に不備はある場合は『却下』となります」
「勧告」とは、どのようなことを意味するのだろうか。
「たとえば、今回のようなケースですと、兵庫県知事に対して、野々村議員に返還を求めるよう『勧告』するということです。ただし、実際には『勧告』が出るケースはめったにありません」
監査結果に納得できない場合はどうすればいいのだろうか。
「その場合は、住民訴訟を起こすことができます。なかなか『勧告』が出ないこともあって、監査請求は訴訟への通過点とも言われてきました」
●野々村議員が返還してしまえば、請求はできなくなる
野々村議員は「説明できない分はすべて返還する」と表明しているが、返還した場合でも監査請求をできるのだろうか。
「監査請求は、財政支出のバランスがとれていないので、その是正を求めるというものです。つまり、返還されたのであれば、請求を行うことはできなくなります」
それでも監査請求を行うことにどんな意味があるのだろうか。
「返還の動きを後押しすることができます。これまでも監査請求が行われると、返還するケースが数多くありました。
野々村議員は十分な説明ができていません。監査が行われるのであれば、野々村議員は監査委員に対して、説明をしなければならなくなります。
政治的な説明ではなく、今度は法的な意味での証明が必要になるのです」
なるほど、きちんとした説明責任を果たすよう、プレッシャーを与える意味もありそうだ。追いつめられた野々村議員はどう説明するのだろうか。