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「まとめサイト」のサッカー日本代表「美人妻」特集――選手の妻にプライバシーなし?
プロスポーツの世界で、若くして結婚する選手は少なくない

「まとめサイト」のサッカー日本代表「美人妻」特集――選手の妻にプライバシーなし?

ワールドカップ・ブラジル大会が大きな盛り上がりを見せている。グループリーグでの初戦で敗れた日本代表メンバーが、6月20日のギリシャ戦でどんな戦いを見せてくれるのか。その試合ぶりに注目が集まっている。

そんな代表メンバーとともに注目を集めているのが、彼らの妻やガールフレンドたちだ。ネット上では、代表メンバーのパートナーを写真付きで紹介する「まとめサイト」も現れた。元女優やモデルといった経歴を持つ女性も多く、サイトには代表メンバーとともに彼女たちの華やかな写真が掲載されている。

しかし、こうした「まとめサイト」の写真には、出典が記されておらず、他のサイトの画像を勝手に転載しているように見られるものもある。また、代表メンバーのパートナーの中には、芸能人でない一般の人もいる。もし彼女たちの写真が無許可で掲載されているとしたら、法的に問題ないのだろうか。インターネット上のトラブルにくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

●プライバシー・肖像権・著作権という3つの問題

「この問題は、(1)選手と女性のプライバシー、(2)選手と女性の肖像権、(3)写真を撮った人の著作権、という3つの角度から問題になる可能性があります」

それでは、まず「プライバシー」の問題から説明してもらおう。

「一般論として、情報がプライバシーとして保護されるためには、次の3つの条件を満たす必要があるとされます。

(a)私生活上の事実、または事実らしく受け取られるおそれがある事柄であること

(b)一般人の感受性を基準に公開を欲しない事柄であること

(c)一般に未だ知られていない事柄であること」

今回のような場合、条件を満たすのだろうか?

「まず、選手が誰と付き合っていて、どんな関係にあるかというのは、私的な事項ですので、(a)『私生活上の事実』といえるでしょう。

さらに、たとえ有名選手といっても、誰と交際・結婚しているのかは公にしておらず、一般に未だ知られていないケースもあります。中には(c)に当てはまるケースもあると思います」

そうした情報は、(b)「公開を欲しない」ものなのだろうか?

「もし選手が自ら交際状況を公表しているなら、誰と交際している・結婚しているといった情報が、選手のプライバシーを侵害するとは言えません。裏返すと、こうしたことを選手が自ら公表していない場合には、選手のプライバシー侵害の問題になってきます。

この点は、交際相手の女性についても同じです。もし女性が、元女優などの経歴を持たない一般の方で、交際などについて公開していない場合、プライバシー侵害となる可能性が高いでしょう。

プライバシー侵害があれば、記事の差止め(削除)や損害賠償を求めることができる可能性があります」

●「無断で撮影・公表されない権利」がある

「肖像権」はプライバシーと何が違うのだろうか?

「肖像権は大まかにいうと、無断で顔や姿を撮影されたり、それを公表されたりしないようにできる権利のことです。『表現の自由』との調整もあり難しい部分ですが、正当な目的もないのに無許可で写真を撮影・公開すると、肖像権侵害となる場合があります」

それでは、許可を得て撮影された写真なら問題ない?

「たとえ本人の許可のもと撮影された写真でも、撮影目的からかけ離れた利用や、無関係の第三者が利用することまで本人が認めたとは限りません。そうした観点からも、他人が撮った出所不明の写真を利用するのは、リスクが高い行為です」

●写真を撮った人の「著作権」問題も

「さらに、他人が撮影した写真を無断で使うと、写真を撮った人の権利を侵害してしまう可能性もあります。

写真は、撮影された時点で、撮影者に『著作権』が発生します。そのため、著作者の許諾を得ないで写真を利用することは、基本的に著作権侵害となるのです」

ネット上に公開されている写真でもダメなのだろうか?

「もし、写真を適切な形で『引用』する場合なら、許諾は不要です。ただし、著作権法上の『引用』にあたるためには、引用元の明示など、いくつもの要件を満たす必要があります。ところが、ネットのまとめサイトなどを見ていると、要件を満たしているとはいえないケースが数多くあります。

著作権侵害となった場合、その写真の著作権を持っている人が、記事の差止め(削除)や損害賠償を求めていくことができます。また、もし著作権者が告訴をすれば、刑事事件になる可能性もあるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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