弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 民事・その他
  3. 飲み会帰りのタクシーで「おもらし」・・・運転手にクリーニング代を要求されたら?
飲み会帰りのタクシーで「おもらし」・・・運転手にクリーニング代を要求されたら?
夜遅くまで酒を飲んだ帰りは、タクシーを利用して帰宅する人もいる

飲み会帰りのタクシーで「おもらし」・・・運転手にクリーニング代を要求されたら?

会社員にとって、自費で乗るタクシーはぜいたくの一つと言えるだろう。飲み会が盛りあがって、終電を逃した際、飲み代より帰宅時のタクシー運賃のほうが高くつく場合もあるが、「たまには」と気分よく深夜のタクシーに乗り込んでみる。至福のひととき・・・に限って襲いかかってくるのが、尿意だ。

運転手に車を止めてもらうこともできるが、「きっと家まで大丈夫」と思ってしまうのが酔っぱらいの悪いクセ。いつしかタクシーは高速道路に入ってしまい、出口かパーキングエリアまで我慢するほかなくなる。

「耐えろ! 大人なんだから!」と己に言い聞かせてなんとかなるならいいが、「おもらし」という最悪の事態を迎えてしまうこともあるはずだ。当然、運転手は激怒し、「クリーニング代を支払え!」と要求してくるかもしれない。

こんなとき、「出物腫れ物ところ嫌わず」「生理現象なんだから仕方ないでしょ」と言って、支払いを拒否することはできるのだろうか。拒否できない場合、タクシーの運転手にはいったいいくら支払えばいいのだろうか。中村憲昭弁護士に話を聞いた。

●クリーニング代だけで済めば、ラッキーかも

「民法上、過失により他人に損害を与えたら、それを賠償する義務があります。今回の場合、自分の体である以上、尿意を我慢すればいつかはその限界に達することが予見可能です。にもかかわらず、トイレに行かないままタクシーに乗った点に、過失があると言わざるを得ません」

やはり、子どものような言い訳はきかないようだ。

「ですから、クリーニング代を支払う必要があるでしょう。場合によっては,クリーニングが終わるまで営業車を稼働できなかった逸失利益(休車損)も、支払わなければならない可能性があります」

乗っていたタクシーが、個人タクシーかタクシー会社のものかで、対応の違いはあるのだろうか。

「そうですね。個人タクシーではなく会社のタクシーの場合、被害者は運転手個人ではなく、タクシー会社です。この場合は、運転手からの直接的な請求に対して『被害者は会社だ』と言って拒否することも考えられますね」

●クリーニング代を支払ったら「領収書」も忘れずに

中村弁護士は、一か八かの裏技を紹介してくれた。しかし、後日、タクシー会社から請求されたらもっと面倒なことになりそうだ…。

「はい。その通りです。時間が経過すればするほど、請求額が多くなる可能性もあるでしょう。ですから、運転手からの請求がよほど法外なものでない限り、その場で応じたほうが無難です。

ただ、手書きでもいいので、賠償金を支払ったという領収証を貰って下さいね。後日、タクシー会社から二重に賠償を求められる可能性も否定できませんから」

たとえ酔っぱらっていても、そこは押さえておきたいところだ。最後に、中村弁護士は至極まっとうなアドバイスをくれた。

「『飲んだら乗るな』とまでは言いませんが、遠くまで帰る場合、トイレに行ってからタクシーに乗りたいものです」

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

中村 憲昭
中村 憲昭(なかむら のりあき)弁護士 中村憲昭法律事務所
離婚・相続、交通事故など個人事件と、組織が万全でない中小企業を対象に活動する弁護士。裁判員裁判をはじめ刑事事件も多数。その他医療訴訟や建築紛争など専門的知識を要する分野も積極的に扱う。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライター・動画編集スタッフと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする