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外国人による「家事代行」解禁で人手不足をカバー・・・受け入れに向けた課題は?
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外国人による「家事代行」解禁で人手不足をカバー・・・受け入れに向けた課題は?

政府は9月9日、国家戦略特区諮問会議で、外国人による「家事代行」についての指針案をまとめた。家事代行事業者の人手不足に対応するため、外国人が働きやすい環境を整備する。大阪府と神奈川県が年内にも事業者の募集を始める考えで、ダスキンやパソナなどが参入を検討していると報じられている。

報道によると、指針案では、外国人の活用はフルタイムの直接雇用に限定し、労働期間は最長で3年間とする。日本人と同等額以上の報酬を支払う一方で、勤め先での住み込みを禁止している。業務範囲としては、炊事、洗濯、掃除、子どもの世話などを想定している。

これまで、日本で家事代行サービスに就くことができるのは、日本人と結婚するなどして「在留資格」を持っている人に限定されていた。外国人による家事代行サービスの拡大には、どんな課題があるのだろうか。池田泰介弁護士に聞いた。

●家事代行サービスは今後、急成長が見込まれる

「野村総研が2014年6月に首都圏と大阪府の25-44歳の女性を対象に行った調査によれば、家事代行サービスの利用経験者はわずか3%でした。まだ利用していない人の理由には、『抵抗感がある』『割高感がある』『不必要』といった項目が上位にあがっています」

今はまだ一般的ではないようだ。

「しかし、野村総研は今後、家事代行サービスの市場規模は、共働き世帯の増加や高齢化社会を背景に、約6倍にも膨らむと予想しています。女性の社会進出促進や高齢化社会の進展、家庭生活の多様化に対応するために、家事代行サービスの充実が求められているのです。

6倍ともなると、サービスを供給するスタッフがますます不足します。そこで、規制緩和でフィリピンをはじめとした外国人スタッフを確保することによって、家事代行サービス事業の成長を支えることが、期待されています」

外国人にお願いするとなると、まずは「言葉の壁」が立ちはだかりそうだ。

「『外国人』が担い手となる場合、サービスの品質確保と利用者の抵抗感の払拭は、より一層重要な課題です。それには、受入企業側が、来日前の日本語能力や家事代行技能・知識をどのように審査するのか、日本の文化・風習も含めサービス実施に際しての研修内容をどのように充実させるか、といったことが大切となります。また、『指針案』によれば行政機関による定期的監査が予定されていますが、実効性のある監査がされなければなりません」

●ハラスメントなどの対策が必要

外国人による家事代行が富裕層の間で広がっている湾岸諸国等では、家事代行を担うアジア系の女性労働者が、雇い主からの賃金不払いやハラスメントなどの被害を受けていることが大きな問題となってきた。日本では、どうだろうか。

「女性の外国人労働者が家事労働を担い、しかも仕事場が家庭内という特殊性から、雇用条件の差別やハラスメントにつながりやすい環境にあります。それらを防止したり、早期に発見・対処する制度が重要となるでしょう。

適切な雇用条件の確保のために、今後行政が標準的な雇用契約書を作成することや、受入企業が現地の職業仲介事業所からの給与天引きをさせない措置を講じる方法の検討が必要です。また、ハラスメント問題については、女性外国人労働者にとって利用しやすい相談窓口設置や、監督行政機関の介入方法をどのようにするか課題となるでしょう。

もともと日本人に馴染みの薄い家事代行サービスを外国人がすることが今後どのように定着するのか、特区での試みが興味深いです」

池田弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

池田 泰介
池田 泰介(いけだ たいすけ)弁護士 六法法律事務所
外国人に関する法律案件の他に、労働事件、家事事件をはじめとする国内民事事件についても多く手がける。外国人問題に関わる著作(共著)として「外国人の法律相談(東京弁護士会外国人の権利に関する委員会〔編〕」

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