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「全部やらせて」旧統一教会・田中会長45分「独演」会見の裏側 司会は3度も制止
発言する田中会長。手前は教会の法務局長(右奥)に相談する神保氏(2022年8月10日、日本外国特派員協会、弁護士ドットコムニュース撮影)

「全部やらせて」旧統一教会・田中会長45分「独演」会見の裏側 司会は3度も制止

7月11日以来の公の場に立った世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長は1時間以上、一滴も水を飲まずに話し続けた。8月10日に開かれた日本外国特派員協会(FCCJ)の会見で、司会の神保哲生氏が3度にわたって質疑応答に移るよう促したものの、教会側が一方的に原稿を読み上げる結果に終わった。

結局、数人の質問を受けた後、まだ手を挙げている記者が複数いるままで会見は終了。以前の会見で「取材には誠意をもって対応する」と語っていた田中会長だが、その姿勢を見ることはできなかった。

●司会の神保氏「何か強い意思に突き動かされるようだった」

運営側によると、予定では田中会長の冒頭表明は会見開始から30分のはずだった。しかし、30分を過ぎても終わる気配はなく、司会の神保氏は英語で、早めに切り上げるよう呼びかけた。

40分を超え始めると、記者たちにも疲労感が現れ始める。ペンが止まってぼーっと前を見据えたり、スマホを眺める人も。一方で、全員スーツ姿の教会関係者は背筋を伸ばし、中にはメモを一心に取る男性もいた。

たまりかねた神保氏が「Mr.Tanaka、田中会長、質疑もあるので…」と2度目に促すと、田中会長は神保氏のほうをまっすぐと見て、声掛けをさえぎるように手を出し「全部やらせてください」ときっぱりと言い放った。

神保氏が振り返る。「何か強い意思に突き動かされているようでした。隣にいた(教会の)山田達也法務局長のもとにも4ページほどの原稿があって、どれくらい読み進んでいるか分かる。短縮したり、はしょったりするのは彼らに裁量はないのかもしれない」

田中会長は3度目の声掛けにはもはや神保氏に目もくれなかった。神保氏はここで諦めたという。結果、演説時間は約45分間にわたった。「以上です。ありがとうございました」の言葉で終えた田中会長の顔には、やりきったという達成感すら浮かんでいたように見えた。

●開催時期は教会側の要請で決定、前日までドタバタ

FCCJは事件直後から会見のオファーは出していたという。しかし、今回の時期になったのは教会側からの要請だったと明かす。

開始時間が確定するまで調整が続き、詳細をリリースできたのは前日の午後3時ごろ。直後からメディアの申し込みが殺到し、1時間足らずで30席は埋まったのだという。

参加できなかったメディアからは質問も多数来ていて、自民党議員との関係や、岸田内閣の顔ぶれ、教会の韓国での活動などについて問うものが多かった。神保氏は「会見は当事者の広報の機会でもあるし、同時にメディア側が問いただせる場でもある。双方に利益があるはずだが、十分な質問時間が取れなかったのは残念だ」と語る。

●定刻で打ち切ろうとする教会側、神保氏は「10分オーバー」で押し切る

結局、午後4時の終了予定を10分ほどオーバーして会見は終わった。これは、教会側がなんとか予定時間で終わらせようとしていたのに反して、質問時間を確保しようと神保氏が押し切った形だった。

質疑では、田中会長はすべてメモを取りながら答えていたが、日本からの献金の割合が分からないと言ったり、友好団体と政治の関係を問われると「政治工作ではなく、共産主義に対抗するために志を一つにする交わり」などと曖昧な表現にとどめたりした。

消化不良気味となった会見で、「全部パフォーマンスだったね」と話す外国人記者も。神保氏は「教会側は一つ一つの疑問に丁寧に答えることもできた。でもそれをしなかった。マイクを取り上げることはできない。何が何でも自分たちのやり方を通すという姿を映像で見せたのではないか」と話した。

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