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「愛妻の医療費を節約したい」夫はなぜ“偽装離婚”を目論んだのか 法的リスクを検証
写真はイメージ(Ushico / PIXTA)

「愛妻の医療費を節約したい」夫はなぜ“偽装離婚”を目論んだのか 法的リスクを検証

病気の妻の医療費を削減するために「一度離婚し、母子家庭として医療費を節約したい」。

そんな相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

「妻が重病を抱えて」いるという相談者。詳細は不明ですが、「母子家庭として医療費を節約」するための離婚だといい、もしかしたら母子家庭手当などを受けることを検討しているのかもしれません。

実際には夫婦として生活しているのに、何らかの事情で離婚届を出す「偽装離婚」に関する相談はこの他にも多数ありました。

SNS上には「偽装離婚してる人、それなりにいると思う」「偽装離婚が一番手っ取り早い公金ゲットの方法」などの投稿も。

偽装離婚したら罪に問われるのでしょうか。後藤貞和弁護士に聞きました。

●偽装離婚は「法的リスクしかない」

法律上、「偽装離婚」の定義や規定があるわけではありません。ここでは「本当は夫婦としての共同生活を解消する意思がないのに、離婚届を出して形式的に離婚し、何らかの不法な利益を得ようとするもの」と考えます。

なぜ、そのようなことをするかといえば、ご相談にあるように、離婚することで社会保障上の様々なメリットが得られるからでしょう。

児童扶養手当といったひとり親世帯への支援が典型です。あるいは、離婚時の財産分与を利用した財産隠しに使われることもありえます。

しかし、偽装離婚は夫婦としての実体があるのに、それを隠して児童扶養手当等の給付を受けるわけですから、法的にはリスクしかなく、絶対に行うべきではありません。

例えば、同居し生計を同一にしていることを隠して児童扶養手当等を受給していた場合、発覚すれば当然支給は打ち切られますし、それまで支給した分の返還を求められることになるでしょう。

●刑事罰を受ける恐れも

さらには、公正証書原本不実記載罪(刑法157条1項)、詐欺罪(刑法246条)などに問われる可能性や、児童扶養手当法等の個別法による処罰の可能性など、刑事罰を受けるおそれがあります。

おまけにですが、判例(最判昭和38年11月28日民集17-11-1469)によれば、離婚には形式的な意思だけで足る(夫婦の共同生活関係を解消する意思までは含まない)とされているため、偽装離婚後に気が変わり、離婚をなかったことにしようとしても無効にできず、ただ離婚した事実だけが残ってしまうことになります。

プロフィール

後藤 貞和
後藤 貞和(ごとう さだかず)弁護士 弁護士法人後藤東京多摩法律事務所
2014年弁護士登録、仙台弁護士会所属。当事者の納得いく解決を目指した親切・丁寧な対応をモットーとしています。Chatwork等のビジネスチャット、ビデオ通話による相談にも対応しています。お気軽にご相談ください。

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