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浪費家の兄が「父親の財産は俺が管理する」と不安すぎる通告…争いを防ぐには?
(イラスト/よこいしょうこ)

浪費家の兄が「父親の財産は俺が管理する」と不安すぎる通告…争いを防ぐには?

小さな頃は仲良し兄弟姉妹であっても、成人してから関係が悪化する家族も少なくありません。中でも、親の老齢期や相続をきっかけに相互不信を強めるケースは多いですが、この度、弁護士ドットコムに相談を寄せた方もその中の一人でした。

相談者は、父親に頼まれたため、父の財産管理をしています。しかし兄から「家の内情に口を出すな」と指図をされ、戸惑っているそうです

「私に依頼したのは紛れもなく、父です。しかし、兄は『(相談者は)嫁いで別の家の人間になったのだからもう家の内情に口を出すな』と言い、自分で管理をしたいと言いだしたのです」

兄は浪費家のため、父親の財産を管理するのではなく、使ってしまうのではないかと相談者は心配しています。父親の財産を守るためにはどのようにすれば良いのでしょうか。光安理絵弁護士に聞きました。

●子どもたちで対立した場合、選択肢は2つ

相談者は父親から依頼されて財産を管理しているのですから、管理していることに本来問題はなく、嫁いだから、ということは気にする必要はありません。

しかし、兄弟姉妹間で、親の財産管理をめぐって争いになることはよくあります。管理していない側は、親の財産が適切に管理されているかどうか心配になります。他方で、相談者が心配しているように、他の兄弟に任せると浪費されることもありえます。

親が認知症を発症したか、それに近いフレイル(加齢とともに運動機能や認知機能などの心身の活力が低下することを、老年医学ではこう呼びます)の場合に、ある兄弟が財産を管理し始めると、他の兄弟は、親の認知能力低下につけこんで財産を好きにしているのではないかと疑うこともあります。

このように、子どもたちで対立した場合、①法定成年後見制度を利用する、②親と任意後見契約を締結する、という選択肢があります。

まず、法定成年後見制度は、親の判断能力が低下していることを医学的に証明できる場合に、家庭裁判所に後見人を選任してもらい、その後見人に財産を管理してもらう制度です。裁判所が選任しますから、兄弟間のトラブルを回避しやすいです。親自身が申立てをすることもできます。

あなたが後見人になりたい場合には、自分が後見人候補者になりたい旨を裁判所に伝えることもできます。しかし、財産総額が一定額を超えていると、親族ではなく、弁護士や司法書士などの専門家が後見人として選任されます。

次に、任意後見契約と言うのは、医学的に認知症などを証明できない場合でも、親があなたに財産管理を任せたいと考えている場合に、あなたにどのような財産をどう管理してもらいたいかを明確にして、契約を結ぶというものです。

契約書は公正証書にしますので、他の兄弟から疑義を出された際には、任意後見契約の公正証書を示して、親自身の意向であることを知らせましょう。もっとも、任意後見契約は認知症が進行しているなど、判断能力低下が進んでいる場合には締結できません。その場合は、法定成年後見制度を利用できます。

最後に、兄弟間でのトラブルを避けるために、最初から弁護士などの専門家に依頼する方法があります。弁護士と任意後見契約を結ぶこともできますし、あるいは成年後見の申立てをする際に、はじめから弁護士などの専門家を後見人として選任するよう裁判所に知らせることができます。

プロフィール

光安 理絵
光安 理絵(みつやす りえ)弁護士 ソレイユ総合法律事務所
大阪大学法学部、同大学院法学研究科修了後、パナソニック株式会社(旧松下電器産業株式会社)入社、本社法務本部配属。2003年司法試験合格、東京地方検察庁、横浜地方検察庁を経て仙台弁護士会に弁護士登録。2021年度仙台弁護士会副会長。現在、ソレイユ総合法律事務所代表弁護士を務め、離婚事件、交通事故事件、刑事事件等を多数扱っている。

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