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民泊めぐる税金「がっかりポイントが多い」…住宅優遇から外れ、納税額の大幅増も  
写真はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

民泊めぐる税金「がっかりポイントが多い」…住宅優遇から外れ、納税額の大幅増も  

民泊新法(住宅宿泊事業法)が6月に施行され、民泊が本格的に解禁されたことで「副収入を得るぞ」と狙っている人もいます。ただ、課税をめぐる注意点を見逃すと、思わぬ「痛手」につながることも。あらかじめ注意点を知っておいた方がいいでしょう。

国税庁によると、民泊で宿泊した人からもらった料金を確定申告する際、区分は原則として「雑所得」になるそうです。20万円以下なら申告は必要ないのですが、他の給与所得などと損益通算ができないというところがポイント。

また、固定資産税は住宅用地の特例として200平方メートル以下なら評価額は6分の1などとされていますが、民泊を運営する規模によっては特例から外れ、税額がかなり増えてしまうことも懸念されるようです。こうした気になる点について、安藤由紀税理士に聞きました。

●「居住用」に使わないと税の優遇が外れてしまう

「最近、流行の民泊ですが、税金の世界では、がっかりポイントが多いです。まず、民泊による儲けは『雑所得』で税金を計算する点に注目です。『民泊やるぞ!』と、はりきって色々と準備にお金をかけ、赤字になってしまっても、会社の給料と相殺(損益通算)できません。これができると、赤字分の税金が戻ってくるのですが。

税金計算のお得システム『青色申告』が使えないのも、がっかりポイントですね。ちなみに、副業ではなく、民泊で生計を立てているぞというレベルであれば『雑所得』は卒業し、損益通算や青色申告が使える『事業所得』での計算も認められます」

ーー住宅への優遇措置が外れる可能性があると聞きました

「はい。税金の世界では、居住用の住宅は、色々と優遇されています。そのため、その住宅を民泊に利用すると、せっかくの優遇措置が外されてしまうがっかりなケースがあるので注意が必要です。三つ紹介します。

一つ目は固定資産税。住宅の半分以上を民泊に利用した場合、『居住用』ではないものとして優遇措置が取り消されてしまいます。実際に、京都市では過去5年分さかのぼって課税されるケースがありました」

●売却時にも注意が必要

ーー二つ目を教えてください

「二つ目は『住宅ローン控除』です。住宅の半分以上を民泊に利用した場合、住宅ローン控除の要件から外れてしまい、減税が受けられなくなります。また、民泊利用部分が半分未満の場合でも、減税額は『居住用部分の割合』を基礎として計算されるので、民泊利用前よりも少なくなります。

例えば、住宅の3分の1を民泊に利用したケースをみてみましょう。民泊をしていなかったら減税額が30万円だった場合、民泊をすることで減税額は20万円となってしまいます」

ーー最後の三つ目は何でしょうか

「三つ目は『居住用財産の特別控除』です。居住用の住宅を売却した場合、その利益の3000万円までは非課税となり税金はかかりません。民泊利用をしていても、現に居住用に利用していれば、この控除を受けることはできます。

ただし、控除の適用は、居住に使っている部分に限られ、具体的にはその家屋の構造や設備の状況及び実際の利用状況などを総合勘案して判断することになります。近いうちに売却の可能性のある物件に関しては、この制度についても注意しておいたほうがよいでしょう。

税金的には、がっかりポイントが多かった民泊ですが、副業が一般的になってきた昨今、会社員の収入源の一つとして、個人的には今後の発展が楽しみだなと思います」

【取材協力税理士】

安藤 由紀(あんどう・ゆき)税理士

大学卒業後、銀行勤務を経て2008年に税理士登録(簿記、財務諸表論、法人税法、所得税法、相続税法の5科目合格)。大学講師、セミナー、執筆など業務は幅広い。経理初心者向けのわかりやすい解説に定評あり。(ブログ : https://ameblo.jp/ando-tax/ Twitter : @andoyuki_

事務所名:安藤由紀税理士事務所

事務所URL:http://www.ando.jdlibex.jp/index.html

(弁護士ドットコムニュース)

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