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本場のベルギービールなのに「発泡酒」扱い…「文化軽視」の謎ルールようやく解消へ
東京ブロンド

本場のベルギービールなのに「発泡酒」扱い…「文化軽視」の謎ルールようやく解消へ

働いた後に飲むビールって最高ーー。記者が今飲んでいるのは、クラフトビールメーカーFar Yeast Brewing社の「東京ブロンド」。華やかな香り、ライトだけどしっかりしたコク。なんだか春の到来を感じる味わいです。

実はこの東京ブロンド、法律上は「ビール」ではなく「発泡酒」とされています。だけど、4月1日からは正真正銘の「ビール」になるんです。一体、どういうことでしょう。(編集部・園田昌也)

●発泡酒は「ビールの下位互換」とは限らない 酒税法が抱えていた問題点

答えは簡単。酒税法の改正により、4月1日からビールの定義が変わるんです。主な変更点は次の3つ。

(1)麦芽比率の変更(67%以上→50%以上)

(2)風味づけに使う副原料の範囲拡大(果実や香味料を認める)

(3)主発酵後の添加(ドライホッピングなどを認める)

東京ブロンドでいくと、麦芽比率は80%以上で従来の基準も楽々クリアしていました。ネックになっていたのは(3)です。

東京ブロンドでは、スパークリングワインにも使われる「瓶内二次発酵」という製法が採用されています。ボトル詰めの際、二次発酵用の糖分を入れるのです。糖が分解され、密閉された瓶内に炭酸ガスが発生します。しかし、これまでは主発酵(ビールができた)後の添加に当たるため、ビールと認められませんでした。

東京ブロンドのラベル

ちょっと理解しにくい仕組みなのですが、酒税法では、発泡酒という分類になったとしても、麦芽比率が50%以上の場合、ビールと同じ税金がかかってしまいます。発泡酒は税金が安く、ビールの「下位互換」「代用品」というイメージが持たれがちですが、税額は麦芽比率次第なんです。ちなみに日本のメーカーが販売している発泡酒の多くは、一番税率の低い麦芽比率25%未満です。

つまり、東京ブロンドはビールと同じ税金がかかるのに「味が落ちる」と思われやすい肩書がつけられていたということです。

財務省HPより

●日本人がベルギービールを「発泡酒」に分類して良いのか?

3月27日、都内にあるビールが飲める「本屋B&B」で、酒税法の改正についてFar Yeast Brewing社の山田司朗社長のトークショーがありました。

山田社長

山田社長は「今回の改正は歓迎すべきもの」と笑顔を見せます。自社製品がビールになるからというだけでなく、「文化」の視点から好ましいと言います。

「これまでは、誇りを持って造っているベルギーの銘柄が発泡酒や発泡酒ですらない新ジャンル(第三のビール)になることもあったんです。英語には、これらに直接対応する言葉ってなくて、海外の人と話すときに困っていました」

有名どころだと、ベルギーの「ヒューガルデン・ホワイト」なども発泡酒扱いでした。麦芽比率が67%に足りない上、副原料として認められていないオレンジピールやコリアンダーを使っているからです。一方で、税額はビールと同じでした。

山田社長はこれまでの分類を振り返り、「ビールは欧米の文化の中から出てきました。どれがビールか、どれがビールじゃないかを、後から日本が定義をこねくり回すのは『文化の軽視』ではないですか」と指摘します。

酒税法は今後、段階を踏みながら2026年10月にビール、発泡酒、第三のビールの税額を一本化する予定。ビールは減税、それ以外は増税となり、350ml缶当たり54円(現在ビールは77円)になります。

なお、日本ビール協会の資料によると、同じ量でドイツの税額は4円、アメリカは9円、高額なイギリスでも46円です。山田社長は、「海外と比べたらまだ高いけれど、ようやくいい流れになってきた」と話していました。

(弁護士ドットコムニュース)

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