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運用リスクを労使で分担「第3の企業年金」、仕組みとメリットを徹底解説
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運用リスクを労使で分担「第3の企業年金」、仕組みとメリットを徹底解説

運用リスクを労使がともに担う「第3の企業年金」が初めて導入されると日本経済新聞(電子版7月14日付)が報じている。記事によれば、小泉産業と小泉成器が今年10月にも導入し、みずほ信託銀行が受託したという。

第3の企業年金とは「リスク分担型企業年金」。既存の企業年金との違い、それぞれのメリット、デメリットはどこにあるのか。北川ワタル税理士に聞いた。

●確定給付型と確定拠出型の違い

まず、従来からある「企業年金」は、どのような制度になっているのか。

「従来の企業年金には、大きく分けて、次の2種類がありました。

・確定給付型(DB):従業員が将来受け取る給付額が決まっている

・確定拠出型(DC):年金資産の運用成績によって給付額が左右される

企業側の視点で見ると、確定給付型(DB)では、運用成績が悪くて将来の給付に不足が生じるときは追加の負担が生じることになり、企業の負担は重い。これに対して、確定拠出型(DC)では、運用成績の結果、従業員が受け取る給付額が変動します。企業には追加の負担が生じない一方で、運用成績が悪ければ、受け取れる年金の額が減ることもあります。

つまり、企業が従業員のために穴埋めをしなければならないのが確定給付型(DB)、穴埋めをする必要がないのが確定拠出型(DC)ということになります」

●第3の企業年金「リスク分担型企業年金」

「第3の企業年金」とは、従来の年金とはどのような違いがあるのだろうか。

「『第3の企業年金』とも呼ばれる『リスク分担型企業年金』は、確定給付型(DB)でありながら、年金資産の運用成績が悪い場合には従業員が受け取る給付額を減額するものです。その代わり、企業側も、年金の財政が悪化するリスクに備えて、いわば『割増』の掛金を支払うことになります」

どのようなメリットがあるのか。

「『リスク分担型企業年金』のメリットとしては、企業に将来の追加負担が生じない点が大きいといえます。

これは会計処理にも影響を与えます。本来、確定給付型(DB)では、退職給付債務を計算することにより将来の負担額を負債計上する必要があります。これに対して、将来の追加負担が生じないリスク分担型企業年金では、掛金を費用処理するだけで済みます。

従業員にとっても、将来の給付額の変動はあるものの、割増の掛金が運用されているため、給付額自体は増える可能性が高くなるのはメリットといえます。また、確定拠出型(DC)とは異なり、ポイント制や最終給与比例(退職時の給与に、勤続年数や年齢等に応じた支給率を乗じて得られる金額を給付額とする計算式)など自由な制度設計ができるのも魅力です」

その反面、デメリットはどんな点にあるのか。

「デメリットあるいは留意点としては、やはり従業員が給付額の変動リスクを負うことに尽きると思います。これに伴い、制度導入時においては従業員への周知と労使の合意がポイントになってくるでしょう。また、従来の制度から移行する場合には、損益にインパクトを与える可能性もあるので、財務面からの検討も欠かせません」

【取材協力税理士】

北川ワタル(きたがわ・わたる)税理士

公認会計士、税理士、経営革新等支援機関。監査法人にて上場企業、学校法人、金融機関等の監査、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO支援、デューデリジェンス等に従事したのち独立。財務・会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。『図解最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』など監修。

事務所名   : 北川ワタル事務所

事務所URL: http://www.sharedmemo.com/snannerhozon/

(弁護士ドットコムニュース)

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