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「ベビーシッター」を使うと税金が安くなるーー厚労省提案の新たな「税控除」とは?
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「ベビーシッター」を使うと税金が安くなるーー厚労省提案の新たな「税控除」とは?

会社員がベビーシッターを使ったら、所得税を安くしてもらえる可能性が出てきた。厚労省は2016年度の税制改正要望に、「ベビーシッター」を利用した会社員の所得税負担を減らす新制度を盛り込んだ。政府は年末にかけて協議するという。

厚労省が要望している新制度では、ベビーシッター費用や無認可保育所の保育料などを「子育て家庭が就労することに伴い、必要となる経費」としている。その一部を所得税から差し引くことで、子育て家庭の負担を軽減する狙いだ。

もし実現すれば、どういう仕組みで税金が安くなるのだろうか。佐原三枝子税理士に聞いた。

●少子高齢化対策の税制として画期的

「制度改正が実現すれば、少子高齢化対策の一環である女性の就労支援として、無認可保育所やベビーシッターといった費用を『特定支出控除』の適用対象である『特定支出』に加えることになります。

これまでの少子高齢化対策の税制は、最も肝心な、子育てをする人そのものへの対策ではありませんでした。保育所などへの事業所に対するものや、教育資金の贈与税非課税などにとどまっていたのです。そういう意味では、画期的だと思います」

特定支出控除とはどのようなものか。

「サラリーマンの方でも、住宅ローン控除や医療費控除などの確定申告をしたという方は多いと思います。なじみは薄いですが、特定支出控除もその一つです。資格取得や書籍の購入といった支出をした場合に、一定額を超える金額を給与所得控除に上乗せして控除することができる制度です。

通勤費や異動に伴う転居費、研修費、資格取得費、単身赴任者などの帰宅費、そのほか書籍・衣服・交際費等の勤務必要経費の6つが認められています。スーツ代なども対象となります。今回の新制度では、ベビーシッター費用などもこの特定支出に加えることができるということです。

たとえば、年収600万円のサラリーマンの男性を例に考えてみましょう。受け取る給与は年末調整で、すでに所得控除174万円が控除されています。この人が特定支出控除の制度を利用できるのは174万円の半分に相当する87万円以上の特定支出をした場合で、87万円を超えた金額が控除対象です。

しかし、すべての特定支出は領収書・明細書のみならず、給与支払者が必要と認めた証明書も申告に必要です。手間がかかる割に、還付される税額が少ないことが多く、特定支出控除が浸透しているとは言いがたい状況にあるのが課題ですね。新たに対象が拡大することで、どれだけ利用されるようになるのかが注目点です」

対象はサラリーマン家庭だけなのだろうか。

「はい。残念ながら、特定支出控除は給与所得者にだけ認められた制度です。しかし、たとえば、シングルマザーで頑張る個人事業者など、ベビーシッター代を経費として認められるべきではないかという人は、給与所得者以外にも多数いますよね。

万人が納得する制度というものは難しいですが、納税し、経済的自立を目指す女性を、公平にバックアップする制度設計を、今後もどんどん進めていってほしいです」

佐原税理士はこのように話していた。

【取材協力税理士】

佐原 三枝子(さはら・みえこ)税理士・M&Aシニアスペシャリスト

兵庫県宝塚市で開業中。工学部やメーカー研究所勤務から会計の世界へ転向した異色の経歴を持つ。「中小企業の成長を一貫してサポートする」ことを事務所理念とし、税務にとどまらず、経営改善支援、事業承継や海外事業展開の支援を手掛けている。

事務所名 : 佐原税理士事務所

事務所URL:http://www.office-sahara1.jp/

(弁護士ドットコムニュース)

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