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空から写真が降ってきた・・・道にばらかまれた「人物写真」をネットに流すのはダメ?
空から大量の写真が降ってきたら、誰もが唖然とするだろう

空から写真が降ってきた・・・道にばらかまれた「人物写真」をネットに流すのはダメ?

空から写真が降ってきた――。JR大阪駅の周辺で9月19日夜、約400枚の人物写真がばらまかれる騒ぎがあった。居合わせた人たちのツイートによると、現場は異様な雰囲気に包まれていたという。

この写真には、電車のシートに座る若い男性が、バッチリ顔が分かる形でおさめられていた。写真を拾った人たちが、それをスマホなどで撮影し、ツイッターなどSNSに投稿したため、大阪でばらまかれた写真は、結果として全国に広まることになった。

報道によると、写真をばらまいたのは16歳と17歳の少年2人とされ、ともに鉄道写真の撮影愛好家、いわゆる「撮り鉄」だったという。2人は警察に対し、写真の男性が撮影待ちの行列に割り込んだため、嫌がらせ目的で写真をばらまいたと話したそうだ。

たしかに、そんな風に顔写真をばらまかれたら、良い気持ちはしないだろう。写真の人物は、ばらまいた人に対して、慰謝料などを要求できるだろうか。また、ばらまかれた写真をインターネットで拡散することは問題ないのだろうか。ネット上の中傷の問題にくわしい清水陽平弁護士に聞いた。

●写真ばらまきは「肖像権」の侵害になる

「無断撮影された写真は、男性の顔がはっきり確認できる写真です。こうした写真をばらまく行為は、『肖像権』を侵害したといえます」

清水弁護士はこう述べる。なぜそういえるのだろう。

「肖像権は『みだりに撮影されない権利』と、『撮影されたものをみだりに公開されない権利』を含む権利です。今回、写真をばらまいた人物は、このような肖像権を侵害したといえます。また、プライバシー侵害にもあたるでしょう」

では、この写真を拾った人が、写真をスマホで撮ってツイッターなどに投稿した場合は、どうなのか?

「ばらまかれた写真を、第三者が写真におさめて、ツイッターなどのSNSで拡散する行為は、被撮影者の肖像権、プライバシー権の侵害を拡大させることにほかなりません。やはり権利侵害になります」

現場のツイートをみると、驚いた人が「こんなことがあった」と素直に投稿しただけのようにもみえるが・・・。

「たしかに、拡散した人に悪意はないのかもしれません。

しかし、さまざまな状況を考えると、今回のような形でばらまかれた写真を拡散すれば、他人の権利を侵害してしまう可能性があることには、気付くべきだと思います。

そうなると、少なくとも『過失』があったといえますので、肖像権やプライバシー権侵害の責任を追及できるでしょう」

●「慰謝料」や「削除」を要求する権利はあるが・・・

写真をばらまいた人も、写真を拡散させた人も、写真にうつった人物の権利を侵害したといえるようだ。すると、写真をばらまかれた被害者は、彼らに対して何かを要求できるのだろうか。

「まず、慰謝料を払えということができます。

また、SNSで拡散した画像について『削除』するよう求めることも、理論的には可能です。

もっとも、法的な手続きにのっとって、それらの請求をするためには、まずどこの誰がやったものかということを特定する必要があります。

そのためには、まずSNSのサービス事業者にIPアドレス等の開示請求をして、さらにインターネットのプロバイダに契約者情報を開示請求をして・・・と、いくつもの司法手続きを踏む必要があります。

手間と時間がかかり、なかなか大変なことですが・・・」

清水弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

清水 陽平
清水 陽平(しみず ようへい)弁護士 法律事務所アルシエン
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会」(2020年)、「誹謗中傷等の違法・有害情報への対策に関するワーキンググループ」(2022~2023年) の構成員となっている。主要著書として、「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第4版(弘文堂)」などがあり、マンガ「しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~」の法律監修を行っている。

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