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スタバに「爆竹」投げ込み「ネット中継」 そんなバカ騒ぎをあおった視聴者の責任は?
コメントなどを通じてリアルタイムで番組に参加できることから、動画生放送が人気を集めている

スタバに「爆竹」投げ込み「ネット中継」 そんなバカ騒ぎをあおった視聴者の責任は?

名古屋市内のスターバックスに爆竹を投げ込み、バチバチとはじける様子をインターネットの動画サイトで生中継――。そんな呆れた行動に出た20代の男2人組が4月上旬、ネットで問題になり、警察の取調べを受けた。

ネットで拡散した動画を見ると、視聴者からは「景気よくいこう」「すぐ逃げればいいじゃん」といったコメントも寄せられていたようだ。動画には、男たちが爆竹を店に投げ入れた後、寄せられたコメントを楽しげに読み上げる様子も収められていた。

彼らの様子を見ていると、コメントが犯罪行為をあおっている、という側面もありそうだが・・・。一般論として、こうしたコメントを書き込んだ視聴者が、何らかの罪に問われることはあるのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。

●「心理的に容易にさせること」はほう助になりうる

「まず、営業中のカフェに爆竹を投げ込む行為は、威力業務妨害罪にあたります。問題は、そのような行為をあおるコメントを書き込むことが、この犯罪の『ほう助犯』にあたるかどうかです」

このように伊藤弁護士は切り出した。「ほう助犯」とはなんだろう?

「ほう助犯とは、その犯罪を自ら実行するのではなく、何らかの方法で、正犯の犯行(実行行為)を容易にさせることをいいます」

この「正犯」とは、その犯罪行為をした人のことだ。

「ほう助行為は、物理的に容易にさせるだけでなく、心理的に容易にさせることも含まれます。

したがって、今回のようなコメント方式での書き込みも、威力業務妨害罪のほう助犯にあたる可能性はあります」

すると・・・書き込みをした人が処罰される可能性もある?

「もっとも、こうしたほう助犯を、現実に犯罪として立件できるかというと、それほど簡単な話ではありません」

どういうことだろうか。

「この男たちは、たしかに視聴者からのコメントを期待して、注目を集めるような行為をしたのだろうと考えられます。

しかし、彼らが個々のコメントに勇気づけられ、それによって犯行が容易になったとまでいえるか、難しいところがあります。

また、コメントをした人が、この男たちの行為について、どこまで認識をしていたかという問題もあります」

●ほう助犯で処罰されるのは「よほど悪質なケース」だけ

そのあたりが明らかになっていないと、実際にほう助犯だとして責任を問うのは難しいようだ。

「そうですね。ほう助犯は、その性質上、どこまでも処罰範囲が拡大されてしまうおそれがあります。そこで、現実に処罰されるのは、よほど悪質なケースに限られる傾向にあるのです。

なお、威力業務妨害の実行行為が終わったあとに、賞賛するようなコメントをしても、ほう助犯にはなりません。犯行後に『犯行を容易にする』ことはできないからです」

それでは、あおるようなコメントは法的には問題ない?

「いいえ、犯行をあおるのはよくないことです。犯罪として処罰されるかどうかにかかわらず、無責任なコメントが、過激な行為を助長するという側面はあります。また、場合によっては、あおった人が民事上の損害賠償責任を負う可能性もあります」

このように伊藤弁護士は指摘し、安易なコメントに警鐘を鳴らしていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

伊藤 諭
伊藤 諭(いとう さとし)弁護士 弁護士法人ASK川崎
1976年生。2002年、弁護士登録。神奈川県弁護士会所属。中小企業に関する法律相談、弁護士等の懲戒請求やトラブル対応などを手がける。第一法規「懲戒請求・紛議調停を申し立てられた際の弁護士実務と心得」著者。

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