商品の利用法がわからなかったり、トラブルが起きたりしたとき、頼りになるのが「サポート窓口」だ。しかし、肝心のサポート窓口に電話をかけたのに、なかなかつながらず、イライラしたことがある人は少なくないだろう。
実際、ネットの価格比較サイトに、パソコンソフトの購入者のこんな声が投稿されていた。
購入した商品のマニュアルを読んでも疑問点が解決しなかったため、ユーザーサポートに電話をかけたが、一日中「ただいま電話が大変込み合っています」という自動応答が続くばかり。しかも、電話は一定時間で自動的に切れる設定になっており、つながるまで待つこともできない。製品の内容はかなり複雑なのに……と、投稿した人はかなり腹を立てていたようすだ。
事前にサポートが不十分なメーカーだと分かっていれば、そもそも商品を購入しなかったかもしれない。そうだとすれば、購入者は、サポートの電話がつながらないことを理由にして、返品を求めることができないだろうか。上田孝治弁護士に聞いた。
●「契約の目的」が達成できるかどうかがポイント
「商品を販売する際に、販売業者がユーザーサポートの存在をうたい、ユーザーサポート規約等でサポートの具体的な内容が定められているのであれば、それは、販売業者が契約に基づいて負う義務の一つとなります。
したがって、『ユーザーサポートがあります』としながら、実際には機能していないのならば、契約に基づく義務が果たされていない、という理由で契約解除(=返品)ができる可能性があります。
もっとも、契約に基づく義務が果たされないことを理由に契約の解除ができるのは、そのせいで『契約の目的が達成できないような場合』に限られます」
●ユーザーサポートは「サブ的な位置づけ」
今回のようなケースで、「契約の目的が達成できない」というのは、どういう意味なのだろうか?
「一般に、商品を購入する場合、契約のメインとなっているのは商品そのものです。商品に関するユーザーサポートは、商品との関係で従たるサービス、つまりサブ的な位置づけになります。
すなわち、『ユーザーサポートが機能しなければほとんどの人が使うことができないような商品を購入した』といった例外的なケースでない限り、契約を解除して返品をすることはできないと思われます」
プロ向けなど元々サポートを前提としているような商品は別として、一般的な商品の売買契約の場合、ユーザーサポートはあくまで補助的なものと考えられているようだ。ただ、一般向け商品でも、「ユーザーサポートが充実」という宣伝文句はよく見かける気がするが……。
上田弁護士は「もし販売業者が、ホームページ上やパンフレット等で、実際のユーザーサポートサービスよりもサービス内容を著しく良く見せるような表示をしていれば、景品表示法上の不当表示には該当することになるでしょう。しかし、景品表示法を根拠として返品を求めることはできません」と話していた。